『 イ タ ズ ラ 』
 
 
 
 朝、ルッチがジャブラを起こすためにジャブラの部屋へ行くと、いつもジャブラが寝ている所に
黒い狼のような犬が寝ているのを発見した。
――コレは幻覚か
 ルッチは自分の眼がどうかしているのかと、つい瞼を下ろして目頭を押さえた。そして
もう一度瞼を開く。
 ――…幻覚じゃなかったか……
 明らかに犬が寝ていた。一瞬自分が野良犬と呼びすぎたせいだろうかと考えたが、おそらく
関係ないだろうと思い直して、とりあえず近寄った。
 ――とにかく確かめてみよう。もしこの犬が本当にジャブラならば、"野良犬" と呼んだ時、怒って飛び起きるはずだ。
「おい、起きろ野良犬」
「! バウッ!!」
 犬が怒ったように飛び起きる。ルッチはこの犬がジャブラだと確信すると、
「おはよう。 ジャブラ」
 と、言った。しかし、ジャブラはルッチの言葉よりも自分の状態に気を取られているようだった。
………!?」
 ジャブラは自分の手や目線の高さなどを確かめると、困ったようにうろたえ始めた。
ルッチはそんなジャブラの様子を見ながら考えていた。
 ――コイツは何故こんな姿になったんだ? 誰かに変なものでも食わされたのだろうか
そうだとしてもメリットは何だ……
 ルッチの考えがそこまで至った時、ジャブラが不安そうに鳴いた。
「クゥーン……
不安か?」
 ルッチの言葉にジャブラは頷いた。
 ――ともかく誰かに相談するべきだな……しかし分野は何だ?
 病気ならば医者だが、変なクスリならばそういうものを買い占めている、カクやスパンダムに
訊いたほうがはるかに早い。
「ジャブラ。俺はとりあえず誰かに訊いてくるから、待っていろ」
 ルッチの言葉に、ジャブラが頭を横に振った。やはり、一人で居るのは心細いのだろう。
「そうか。 なら付いて来い、他の奴は上手く誤魔化す」
「ワウッ!」
 ルッチが言って歩き出すと、ジャブラは嬉しそうに尻尾を振って、ルッチについてきた。普段は、
ルッチに対して嬉しさを表に出したりはしないので、おそらく無意識に動かしているのだろう。
 ――いつもの意地っ張りな態度もいいが、素直なのも良いものだな。
 ルッチはそう思ってジャブラをじっと見ると、ジャブラは "どうしたんだ" と、言うようにルッチを見た。
「何でもない」
 "そうかよ" とでも言うようにジャブラがルッチから視線をはずす。ルッチがジャブラに声をかける。
「とりあえず……カクのところへ行こう。変なクスリならあいつのほうが詳しい」
 スパンダムに訊くのはある意味危険だ。
「ワフッ」
 ジャブラは同意するように頷いた。
 カクの元へ行く途中、ハットリとジャブラが何か話しているようで、ルッチは気になっていたが、内容が分からないのだから仕方が無いと考えて、気が付かないふりをしていた。
 
 
 
 カクの部屋へ着くと、ノックをせずに扉をあけた。
「入るぞ」
「なんじゃ、ノックぐらいせんか……で、何じゃ。 その犬は」
 カクが訊いてきた。動揺は見えないが彼がCP9である以上、犯人で無いと断定は出来ない。と考えつつも
ルッチが答える。
「ジャブラだ」
「ああ。 確かに顔に傷があるのう」
 言われてから、ルッチがジャブラの顔をよく見ると、左眼の部分に傷が有るのに気が付いた。
「そうだな、慌てていたから気が付かなかった」
「わはは、ルッチらしくないのう。 それはそうと……心あたりが無いことも無いぞ?」
 カクはルッチが来た事の意味を理解したらしく、ルッチに向かってそう言った。
「何だ?」
「昨日な、ハットリがそこの棚にある、"成犬薬"を持っていってしもうたんじゃ。 名前のとおり
犬になる薬をな」
「ほう……?」
 そういってルッチがハットリをにらむと、ハットリは悪戯がばれた子供のようにビクリとした。
これは間違いないと踏んだルッチは、後で叱ってやろうと思いながらカクに訊いた。
「それで中和剤はあるのか?」
「いや、一日経てば治るタイプじゃから無い」
そうか、残念だ」
 ルッチはそういったが、当の本人であるジャブラは治ると知ってホッとしたようだった。
そんなジャブラの様子を見てルッチは言った。
まあいい。ジャブラ、帰るか」
 そう言って歩き出すと、ジャブラもそれに従った。
 
 
 
 次の日の朝になると、ジャブラはカクの言った通り元に戻っていた。
「おっしゃぁ!」
 嬉しそうにしているジャブラに、ちょうどやって来たルッチが声をかけた。ハットリは肩にはとまらず傍を飛んでいた。
「良かったな、それでコイツは何故こんな事をしたんだ?」
 怒ったようにハットリを指差しながらルッチが言うと、ジャブラはこう答えた。
まぁ、別にいいじゃねぇか。 戻ったんだしよ」
お前が良いなら良いさ」
 そんな二人の会話を聞きながら、ハットリは思った。
 ――お、俺のこと庇ってくれるなんて! や、やっぱ告白すべきだったかな
 
 ハットリにしてみると、今回は会話が出来ただけでも上出来なのだが、あわよくばルッチから奪ってやろうと
思っていた。
 そんなハットリをジトッとみながらルッチが言う。
無駄だぞ」
「何がだ?」
 突然のルッチの言葉にジャブラがそう訊くと、ルッチは言った。
「お前じゃないさ」 
「何だよ。 わけわかんねぇ」
 複雑な顔をしながらジャブラが言うと、ルッチは"フッ"と笑って、
「まあいい。 戻ったのも分かった事だし、俺は帰る」
「ん、じゃあな」
 ジャブラに見送られて部屋を出ると、ルッチはハットリを鷲掴みにして、脅迫するように言った。
早死にしたくなければ……余計なことは考えるな」
「ク、クルッ・・ポー」
 怯えながらハットリが答えると、ルッチは手を離した。
 
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あとがき
 変ですね
 ルチジャブのはずがルチジャブハットリになってしまいました。 
 くずのは様、多少内容違いですがよろしければ貰ってやって下さい。
 
コメント
 どこが変なんですか!?超素敵な小説だと思います!!
 ルチジャブにハットリが絡む話は大好物ですので(笑)
 こんな素敵なもの頂いちゃっていいんでしょうか…(ガタガタガタ)←チキン
 本当にありがとうございました!!早速飾らせていただきます★