綺麗だ。

言われ慣れた台詞。

なのにどうしてか、言われた瞬間世界が変わった気がした。

 

 

モノクローム

 

 

お偉方との会合。

馬鹿馬鹿しいジジイどもの妄執など聞き飽きた。

こんなどろどろとしたモノクロの世界を生きる俺。

 

会合を終えて司法の島に帰ってきても、相変わらずだ。

色彩のない世界、それは俺の心そのもの。

 

「ぱお〜」

「…ファンク」

 

ファンクフリードがぽすっと頭に鼻を乗せてくる。

まるで、慰めているかのように。

……やはり分かるのだろうか、俺のこの重苦しい気分が。

動物はいい………裏切らないから。

人間同士だと、裏切りなんて日常茶飯事。

かくいう俺も、そうとう悪どい手口も使った。

 

だって、この世界に生きるなら、そのくらいの処世術当然だろ?

 

そうは思うが、やはり先ほどの妄執に縋りつく老人と同じだと思いたくないのだ。

 

 

動物……かァ

 

動物…ではないが、とある人物が頭に浮かんだ。

思い浮かんでみると、頭から離れることはなくて…。

顔が見たいと思った。

無性に、ただ………無性に。

 

ブルブルブル……

電伝虫を使って呼び出しをかけるが、どうやら『狼の間』は留守のよう。

 

「ち……っ!」

 

ジャブラは煩わしさを極端に嫌う。

子電伝虫など持って行くはずもないだろう。

 

全く、ドコ行きやがったんだ??

一度顔が見たいと思うと、何がなんでも見たいと思ってしまう。

…探しに行くか

このままここにいて鬱々と考え込むのは御免だ。

俺様から出向くのは癪に障るが…まぁたまにゃこういうのも悪かねェ。

 

「ちょっと出かける…留守は頼むぞ」

「ぱおぉぉーん」

 

ファンクフリードに留守を任せると、スパンダムは執務室を後にした。

 

 

電伝虫にでなかった、ということは『狼の間』にはいないはず。

そうすると、ジャブラが行きそうな場所はどこだろう。

 

ためしに給仕室に行ってみた。

給仕たちが忙しそうにしている中、例のギャシーも仕事をしている。

ギャサリンが非番でないのだから、かなりの確立でここに居ると踏んだのだが。

 

「ここにゃ居ねェな」

 

ぴょこりと中を覗くが、目的の人物がいなかったので、次の目的地へと向かう。

 

よく昼寝に使っていたはず、と中庭へと向かってみた。

今日はいい天気で、昼寝するには抜群の陽気なのだが…。

 

「ここもダメか」

 

こうして自らが探しているのに、なかなか見つからないといのは腹立たしい。

どすどすと苛立たしげに足音を響かせながら、スパンダムはもう一度塔内へ戻ろうとした。

と…。

 

「………」

 

何が理由、という訳ではない。

ただ、直感的に見上げた先、それは…。

この島で一番太陽に近い場所、すなわち屋上だった。

スパンダムは半ば誘われるようにして、屋上へと向かった。

 

 

屋上へ着いた。

やっぱり昼島だけあり、日の光が眩しい。

だが、決してそれは不快ではなかった。

 

そして…いた、目的の人物が。

アスファルトの上に無防備に寝転がる、独特の格好をした人物。

やっと見つけた。

その人物に近づくと、静かに声をかけた。

 

 

 

文句を、言おうと思った。

こんなに探し回ってるのに、どうしてこんなとこに寝てるんだ、とか。

俺が会いてェと思ったら、てめェから来るのが当然だろ、とか。

いつものように悪態を吐こうと思ったのだ。

…声をかけるところまでは。

 

だがどうだ?

綺麗だという台詞ひとつに。

無邪気に笑う表情ひとつに。

ドス黒いものが消されていくような…そんな感覚。

綺麗だなんて世辞、言われ慣れている筈なのに。

 

「って、野郎に綺麗っつわれても嬉しかねェよな」

 

固まったように動かず、何も言わないスパンダムを見て、ジャブラが苦笑する。

本当に、人がいいと言うか、何というか…。

 

「…褒められるのは悪い気しねェ」

「そりゃよかった…で、何のご用事で?」

「……用がなきゃ…来ちゃいけねェか?」

「………くくっ」

「何が可笑しい?」

「何だ…長官もサボりかよ」

 

堪えきれないとばかりに笑いながら言うジャブラ。

思わず呆気に取られてしまうほど。

 

「ちょ…っ!?俺はっっ」

「いいからいいから」

 

そのまま引かれると、ジャブラの腕の中に引き込まれるスパンダム。

 

「何だよォ」

「こんないい天気なんだ、昼寝しなきゃ損だぜ?」

「………」

 

言うだけ言って、またジャブラはくかーっと惰眠を貪り始める。

スパンダムの頭は、ジャブラの片腕に抱きこまれたまま。

 

たまにはこういうのもいいかもしれない

 

心が軽くなったから、そんなことを思ったのだろうか。

いつもだったら、ベッド以外で寝るなんて絶対御免だと思うのだけれども。

そのままジャブラの腕を枕にしながら、スパンダムもうとうととまどろんだ。

 

 

キミの一言で、モノクロの世界に光が射す。

キミの笑顔で、モノクロの世界が彩られる。

 

小さく…音を立てながら…世界が変わった気がした。

 

俺の世界は、もうモノクロームじゃない。

 

FIN

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カリファ「あらあら、二人して仕事中に逢引?」(こめかみに青筋)

スパンダム「いや、あのなカリファ…」(滝汗)

カリファ「セクハラです!」(眼鏡、クイ!)

スパンダム「言い訳しようとしたからっ!?」

カク&ルッチ「「ジャブラ!!」」

ジャブラ「な、何だよ!?」(ビク!)

カク「長官ばっかズルいんじゃっ!」(机バンバン)

ルッチ「次は俺と逢引を…」(すっとジャブラの手を取る)

ジャブラ「は??」(滝汗)

スパンダム「こらァァァァ!ジャブラは俺のだっっ!!」(ジャブラの腕にぎゅうっと)

 

10000HIT御礼でございます(遅っ!

今回は漫画なんぞ入れてみました、スパンダムはパンダのが可愛いなァ♪

しかし、これじゃスパジャブなんだかジャブスパなんだか(汗)まぁ二人は仲良しってことで。

こんなシリアス長官を書(描)くのは久々だよ!…キャラ会話はいつものダメ長官だけどね。

当家のような辺境まで遊びに来てくださってる方に捧げます。

11月末日までダウンロードフリーですので、じゃんじゃん持ち帰っちゃってください!

本当にいつもありがとうございます(ぺこり)