例によって扉絵のネタバレ含みます。

すんません、何か書かずにいられませんでした(苦笑)

 

 

 

「あ゛〜っっ!!ナニやってんだ、てめェらはっっ!!」

「ジャブラたちだって先週稼いで来たじゃろぉに」

「働かざるもの食うべからず、っていったかしら」

「いや、そゆことじゃなくてよぉ…」

 

 

つかの間のしあわせ

 

 

“動物園があるだろうが”

 

ふと、あの緑の髪をした剣豪の行った台詞が頭をよぎった。

 

「ん…」

 

いつの間にか意識がなくなっていて、気付けばどこかの街中。

どうやら思いのほか自分は重症だったらしい。

全く、そんなことにすら気付けないとは堕ちたものだとつくづく思う。

目を覚ますとそこにはフクロウがいて、現状を説明してくれた。

 

「こまったのぉ、ルッチは眼を覚まさんのか」

「ちゃぱぱー俺は余計なことを話してしまうからー、興行をさせてもらえなかったのだー」

「…そりゃぁ、仕様がないの」

 

フクロウを外したのは、本気で正解だと思ったが、あえて口にはしなかった。

 

で。

日々の食料とかも医療費を稼ぎつつ何とかしてくれたらしい。

といっても、極限まで無駄を省いた質素なものではあったのだが。

それならば、自分も何かしなければと思った矢先。

 

「動物園のぉ…」

 

成程。頭を過ぎった台詞は、これ以上なくタイムリーだと感じた。

 

 

 

 

全く、セクハラもいいとこだわ。

何せ、服を全部破るなんて真似、されるなんて想像もしていなかったし。

あのオレンジ髪の小娘…悪魔の化身か何かかしら。

ま、まぁ…そのおかげ?でジャブラが服貸してくれたんだし…。

流石にこう、何と言うか…。男物よね。

いつも前開けてきてたから、こう華奢なイメージがあったのだけれど。

自分で言うのもなんだが、かなり豊満な自分の胸が収まるほど胸板があるとか思っていなかった。

 

「………」

「ちゃぱ?寒いのか??そんな服握ってしまってー」

「え?ええ、流石にちょっと寒い気がして」

 

 

こんなことでもなければ上着借りることなんてないのだし、役得?ではあるのかしら…

Σはっ!う、嬉しいとか思ってないんだからね!!(ツンデレ的)

ともかく。

こんな格好だし、私の能力はお祭り的な要素もないし…なかなかできる興行って思いつかないのよね。

なーんて考えてたら、カクが目を覚ましてて。

でもって、あっさり興行やって稼いできたりしたわけなのよ!!

何!?コレじゃ私もルッチやフクロウと同じく思いっきりお荷物じゃないっっ!!

何より、前の興行でジャブラが怪我してるとこまで見てしまったので。

当然、沽券に関わるだろうから見てないフリで通しているけれど、自分も何かできることが欲しいと強く思った。

 

ぽつり。

 

余りに考えすぎたせいか、雨が降ってきたことにも気付かなかった。

鼻先に小さな雫が降ってきたことで、ようやく気付くなんて。

一時は前線の暗殺家業を担っていたなんて嘘のようだ。

 

「雨…」

 

成程。これはかなりタイムリーな天候になったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「なァにやってんだ、お前らはっっ」

「何を怒っているんじゃ?」

「いきなり消えていたから、どうしていたか心配だったんだろう」

「ブルーノ!!心配とか阿呆な憶測抜かすなっ!!」

「なら何を怒っているの?」

「…とりあえず、その格好で出歩くな…後生だからよぉ…」

 

とにかく、疲れがたまって倒れていたほどのカクがまさか滑り台という荒業に出ると思わなかった。

でもって、カリファが自分の上着一枚で屋根の上、清掃業を手伝っていたなんて。

下から万が一誰かに覗かれたら困るだ狼牙…。

とりあえず慌ててカクを寝かしつけ、無理矢理上着を捲くって背中を冷やしてやる。

でもって、カリファの濡れた体を乾かすべく、ハンカチで拭っては絞りを繰り返す。

 

「馬鹿だろ、おめェら」

「む、別にそんなに重症じゃないじゃろ」

「いいからオマエはこのまま休んで鋭気を養え」

「私に向かって馬鹿とか言う??セクハラよ」

「とりあえず、多少稼ぎもたまってきたから、オマエはそのギリギリの格好やめとけ」

「あら、私気に入っているのに」

 

ジャブラの気兼ねも気にすることなく。

というか、むしろ構い倒してくれる反応が嬉しくて無茶をするところがそっくりな二人。

 

 

「カリファは即行服を買いにいくべきじゃの」

「カクは寝ているべきよね、病人だもの」

 

にこにこ笑いながらも、二人の間には確実に火花が散っている。

 

 

「ちゃぱぱー怖いのだー」

「よよい、喧嘩はぁー、ダメだぁ…」

「余計な口を挟むのは命取りだぞ、クマドリ」

 

 

フクロウ、クマドリ、ブルーノの三人は不穏な空気を感じ取ると、敢えて火中の栗を拾わぬようにしているのだが。

 

「仲いいなァ、オマエら」

 

気分は保護者、鈍さ全快な渦中の人物は全く気付いていないようだ。

 

「「ジャブラ…ちょっとそのままでいてほしいんじゃが…

  ジャブラ…ちょっとそのままでいてほしいんだけど…」」

 

二人は同じ意味合いの台詞を言うが早いか、カリファはジャブラの右ひざに、カクは左ひざにそれぞれ頭を乗せる。

 

「ちょ、重いだ狼牙!!」

「わし労働でくたびれたんじゃよー」

「私も労働でくたくたなの、少しこうさせて?」

「……しっかたねェヤツラだなァ…」

 

苦笑しつつも、そのまま二人の頭をぐりぐり撫でる。

この辺りがブルーノ曰く底抜けに良い男だと称されてしまう所以なのだが。

 

「今だけだかんな」

「「了解」」

 

鳴呼、つかの間のいい夢が見られそうだ。

そう思ったのもやっぱり同時で。

将来有望な若者二人は、やっぱりほぼ同時に、つかの間の夢に誘われていった。

 

FIN

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ジャブラ「コイツら、こんなに甘えたがりやだったかァ??」(小首かしげ)

ブルーノ「…まぁ、思春期抜けたてってこんなもんだろ」(遠い眼)

フクロウ「ちゃぱ!俺たちも構ってほしいのだー」(右腕、抱きつき)

クマドリ「よよい、右に同じくー」(左腕、抱きつき)

ジャブラ「お、重…っ」

ブルーノ「こらこら、ジャブラも怪我…疲れてるから」(思わず口を滑らしそうに)

カリファ「あら、じゃぁ私が膝枕してあげる」(むくりと起きて膝枕)

ジャブラ「いや、カリファ…これ色々マズイんじゃぁ…」(滝汗)

カク「ずるいんじゃーワシがお礼にしようと思ったのにぃぃぃ」(地団駄)

ジャブラ「…」(やはし滝汗)

 

ブルーノ「大変だな、良い男すぎるのも」(ぽそり)

 

ルッチ「だから!俺も!俺もいちゃいちゃしてェ!!」(血涙どばー!)←推定、未だにこん睡状態な眠り豹状態人物の魂の叫び

 

もうじき誕生日なルッチ捕まえて、何て酷なマネしてるんだろ私。

まぁ、これがドSプレイの醍醐味なんですけどね(ものっそい笑顔にぱー♪)

 

ルッチ「ふざけるな!!」(腹いせに枕投げ)←意外に元気?