ガシャガシャガシャ…ッ!

っとに、何で俺があの馬鹿猫のたまにこんなことをっっ!

苛立ちをぶつけるかのように、力強くボールの中身をかき混ぜていくジャブラ。

そのリズミカルな音は、ジャブラの料理の腕前を如実に表していた。

 

 

本日のすぺしゃるめにゅー

 

 

今日…6月2日。

考えたくもないが、この日があの馬鹿猫の生まれた日。

だからといって、何がどうという訳でもないし、プレゼントだなんて戯けたモノを用意する気もなかった。

…長官の呼び出しより前には。

 

“一体何のご用で、長官?”

“オマエ知ってたか、今日ルッチの誕生日なんだよ!!”

“……それが何か?”

“だからね、ジャブラ…私たちで何かお祝いに作ろうかなって”

“…で?”

“かといって、ブルーノはルッチと一緒に海軍本部じゃからのぉ…”

“……だから何だよ”

“早い話が、料理の得意な人間が必要なのだー、ちゃぱぱぱー”

“よよい!すまねェがァ…頼まれちゃァくれねェかァ…??”

“あの馬鹿のために何か作れってことか?”

“頼むよォ…俺、すっかり忘れてアイツに今日使い頼んじまったんだよぉぉっっ!!”

“そういう訳よ…まぁみんなで作ればすぐでしょう?”

 

長官に泣きつかれ、カリファに諭されて…。

仕方なく、本っっ当っに仕方なく、誕生祝なんぞを作るべく給仕室へと向かった。

 

 

 

ただ、ジャブラは本当は作り方だけ教えて自分は手を出す気はなかったのだ。

しかし、しかしである。

 

“うぉっ!なんだ、このクリームめェェ!!”

“ちゃぱぱー泡立てるって、洗剤使うのかー”

“よよい!泡だて器ってなァ、これかァ??”

“そりゃ『たまじゃくし』じゃろ?コッチじゃコッチ”

“カク…それは『フライ返し』よ…”

 

とまぁ、こんな調子。

おかげで、材料もかなりダメになったり先にまったく進まなかったりで。

唯一まともな知識を持っているのは流石女の子なカリファだけ。

ジャブラは頭を抱えながら、役立たずを放りだして、カリファに指示だけしながら、自分も調理に加わった。

 

「OK、私はゼラチンを溶かせばいいのね」

「おう、任すぜカリファ」

「これがそっちと混ざるとヨーグルトのババロアになるのね」

「まーな、ケーキの材料は長官たちが洗剤まみれにしちまったしよォ…」

「あれは…勿体無かったわね」

「………そだな」

 

ガシャガシャガシャ!

本当に、思い返すと苛立ちが募る。

何せ、こんなでもジャブラは食べ物を無駄にするということが嫌いなのだ。

ただでさえルッチのためというのが嫌なのに、余計に憂鬱になってくる。

はぁ…

盛大に溜め息を吐くジャブラを宥めて、カリファは火にかけた鍋の中身を混ぜた。

 

「そろそろかしら…」

「ん〜…そーだな、んじゃ混ぜっか!」

 

カリファが火を消すと、ジャブラはボールを持ってコンロへと近づいた…。

しかし。

「パオーン!!」

「え゛?」

「何事っ?」

 

がしゃぁぁぁぁん…っっ!!

 

どこからか脈絡もなく調理室に突っ込んできたファンクフリードのおかげで、ボールの中身はぶち撒けられてしまい…。

結局カリファを庇ったジャブラの頭の上からヨーグルトソースが降り注いだわけで。

ガランガラン!

床に落ちたボールが小気味良い音を立てた。

「あ゛〜もうっっ!空になっちまったじゃねェかァっっ!!!」

苛立たしげにボールを拾い上げて入り口を見ると、慌てふためいている役立たず4人組。










 

「カク…」

「な、何じゃ?」

「てめェがついてて、何でこんなんなってんだよ!」

「じゃが、長官が鬼ごっこがしたいと…」

「ちょぉかぁんっっ??」

「だってだって、追い出されて暇だったんだよぉ…」

「ちゃぱぱー怒られてしまったー」

「当ったり前ェだ!はったおすぞ、てめェら!!」

「まぁまぁジャブラ、とりあえず落ち着いて…ね?」

「よよい!ここァ一つオイラの切腹でェ…」

「しなくて結構」(眼鏡クイ!)

「げ…マズいのぉ…」

「ちゃぱ?どーしたのだ、カクー?」

 

クマドリの切腹劇をカリファが止めると同時に、カクが別の方向を向いて慌てだす。

同時だった。どこを見ているんだ、と一同がそちらを向くのと、声が聞こえたのとは。

 

「何してるんだ、そんなところで?」

ブルーノの声。そして…。

「長官…使いを頼む以上、執務室にいていただきたいものだ」

今回の渦中の人物、ロブルッチその人の声がした。

 

全員が固まっている最中、ルッチとブルーノはひょいと中を覗き込む。

 

「………凄いな、これは」

ブルーノは純粋に調理室の汚れっぷりに驚きを隠せないようだ。

なにせ、そこらじゅうが先ほどのボールの中身でべたべたなのだから。

しかし、ルッチは別に思うところがあるようで、無言で中へつかつかと入っていく。

「………」

「な、何だよ?」

「………」

「だから、何だと聞いてお狼牙っ!」

「………ぺろ!」

「な、ななななな……っ!?」

「………ヨーグルト?」

「何すんだ、貴様ァァァ…!!」

 

ぺろりとジャブラの頬を舐めると、ジャブラは真っ赤になって怒り出す。

だが、その怒りの鉄拳はいとも容易くかわされた。

 

「で、これは一体何なんで、長官?」

「だからよぉ…俺、今日お前を海軍本部行かせただろ?」

「じゃが、今日は一応ルッチの誕生日じゃからのぉ」

「私たちでお祝いしようかと」

「……それでどー頑張ればこんな惨状になるんだ?」

「ちゃぱ?ブルーノは細かいなーちゃぱぱー」

「よよい!ここァ俺の切腹でェ…」

「いや…それはいらない」

「そんな訳でよぉ…俺たちの鬼ごっこでジャブラが作ってたもんがあんな状態に…」

「………成程」

「まぁ、もう一回ジャブラに作ってもらえばのぉ」

「てめェ…この状態でまだ俺にやらせる気かよっ!?」

「いや、必要ない」

「「「「「「「は?」」」」」」」

 

「むしろ、この方が好ましい」

 

ニヤリと嗤うと、ルッチはジャブラをひょいと担ぎ上げた。

 

「ちょ、何すんだよっ!?」

「せっかく誕生祝をしてもらったんだ、本日のスペシャルメニューを頂こうかと」

「はァ!?それとこれとどう関係が…」

「『狼のヨーグルトソースがけ』とは喰い応えがあいりそうだ、ククク」

「え゛、ちょ…ちょっと待て」

「ってな訳で、コイツを少々お借りしても?」

「あ〜…好きにいていいぞー」(遠い目)

「ちょ、長官っ!?」(焦)

「流石長官、話が早い」(スタスタと自室へGO!)

「いやだァァァァァァ…!はーなーせぇぇぇぇぇぇーっっ!!」(滝涙)

 

 

と、いう訳で。

ルッチはその日、自分の部屋で最高のディナー(笑)を食したのだとか。

 

めでたしめでたし★

 

 

 

FIN

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ってな訳で、ルッチ兄さん誕生日おめでとー★

 

ジャブラ「めでたくねェェェ…っ!!」(机ばんばーん!)

ルッチ「………」(じー)

ジャブラ「な、何だよっ!?」(ビクビク)

ルッチ「……旨かった」(ごちそうさま)

ジャブラ「何つーコメントかますんじゃ、この破廉恥猫がァァァ…っ!!」(卓袱台返し!)

ルッチ「……真実を言っただけだがな」(しれっと)

 

あはははー!ルッチさんの誕生日なのでジャブラの不幸率アップだねェ(親指、グッ!)

ヨーグルトってのはお肉を柔らかくする効果があるそうです。

きっとさぞかし美味しく狼さんをぺろりと食べたに違いないっっ(拳ぎゅー!)

ちなみに、イラストのジャブラさんにべっとりかかってるものも当然『よーぐると』ですよ〜?(笑)

 

 

ちなみに、ルチ誕にちなんで6月末までダウンロードフリーです★

煮るなり焼くなり叩くなりっ!…何なら蒸したってOK、お好きなようにしちゃってくださいませ〜