「ね、美味しい?」

「は、はァ…旨いとは思いますが」

ジャブラの手には大きいくらいのおにぎりを促されるままに食べてはみたのだが…。

味とか以前に、今の状態が緊張しすぎて倒れそうだとジャブラは思った。

 

 

幸せってこういうこと

 

 

ホラ、と示されたのは自転車。

前にあるカゴには、なにやら大きな風呂敷の包み。

 

「………」

 

何て言うか…こう………いわゆるお弁当?みたいな…

 

「今日、俺5時起きして作ったのよ」

「な……にをで?」

「見て分かんない?お弁当」

「お……おべんとぉ…」

 

何と言うか、ミスマッチだ。

目の前で話している大柄の男は、自分の記憶が正しければ海軍の頂点を成す者の一人のはずで。

しかも、性格は面倒ごとが大嫌い…だったはず。

さらに言えば、ダラけたスタイルが特徴で、自分から動くようなことはまずなかった。

…少なくとも、今日までは。

 

「結構自信あるのよ、これが」

「えーっと…ちなみに料理したことってェのは…」

「今日が初めてだけど?」

「………」

 

うん、何か缶詰大量に購入してきて料理だと抜かした馬鹿猫が頭をよぎったな、今…

 

「そりゃァ一体どうしたんで?」

「決まってるでしょ、出かけるの」

「……いってらっしゃい」

「何言ってるの、ジャブラもだって」

「は?」

「だから、お出かけ…俺とワンちゃんで」

「いや…俺、これから任務なんスけど」

「ん〜そりゃ困ったね……」

 

小首を傾げながら、全く困ってない口調で続ける青キジ。

そうかと思うと、そのまま懐から小伝電虫を取り出した。

 

“あ、長官?ちょっとさ、今からジャブラ攫うから”

“ハァ!?ちょっと今マジに忙しいんですけど!!”

“ん?あ、でも昨日豹のボウヤが帰ってたでしょ、だから問題ないじゃない”

“いや、今日あいつ等休暇…”

“ま、あとは任せるから”

 

よろしく、と投げやりに長官に任せ、そのまま通話を切ってしまう…。

 

「さ、じゃぁ出掛けましょうや」

「え゛…」

「…なーに、まだ問題あるっての?」

「………ないです」

 

とまぁ、こんな訳で。

現在、青キジの愛自転車に乗せられて。

氷で出来た島の上で弁当を広げていたりする訳だ、これが。

ちなみに、青キジがそこらの海を凍らして作った島である。

何でも、これなら他から邪魔されないから、ということらしい…。

で、恐れ多くも大将が作ってくれたお弁当を食べていたりする。

………青キジの膝の上で。

 

「……あの」

「ん?」

「そろそろ降ろしてもらえねェ?」

「んー、だって直に座ったら冷たいでしょ」

「いや、そりゃそうなんですが…」

 

確かに、氷の上にそのまま座るというのは冷たいだろう。

まして、ジャブラの服装はどちらかというとかなり薄着なのだし。

じゃぁ、青キジが寒いでしょうと言い返せば、氷結人間に何言ってるのと苦笑される始末。

 

「あ」

「?」

「お弁当付いてる」

「え?」

「ここ」

 

ぺろり

後に座る青キジの顔が近づいてきたと思うと、ジャブラの口の端に濡れた感触。

考えるまでもない、米粒が付いていたのを舐め取られたのだ。

 

「ななななな…っ!?」

「ん、これでいっかな」

「ああぁぁ、あぉキジ!?っ」

「ん?どしたの??」

「いや、だって…今のっっ!!」

「いいじゃない、何かデートっぽいでしょ」

「で、でぇと…」

 

成程。

確かに、弁当を持って、遠出して、なおかつ膝だっこ…デートの定番でもある。

いや、だが、だけど、しかし…

 

「だからって、わざわざ大将が弁当作んなくても…」

「いーじゃない、やってみたかったんだから」

「でも…」

「何?美味しくない??」

「いや、初めてとは思えねェ出来栄えかと」

「じゃ、何が気になんの?」

「だって…大将に悪ィ気が…」

「気にしない気にしない、はい、あーん」

「え…ちょ、それは…」

 

こ、これはいわゆるデートのお約束“あーん”というやつでは…

 

「“あーん”は?」

「………あー」

「ん、よくできました」

 

半ば青キジの勢いに押される形で口をあけると、器用な箸遣いで卵焼きが運ばれてくる。

それを租借すると、嬉しそうに今度は俺にも食わして、と促されるジャブラ。

 

「……じゃ、口開けてくださいや」

「違うでしょ、あーんってやってくれなきゃ」

「………あーん、してください」

「んじゃ、あー」

 

今度はジャブラの方から肉団子を食べさせると、嬉しそうにそれをぱくりと食べる青キジ。

そんなこんなで、二人して作りすぎぐらいの弁当を平らげてしまった。

 

 

 

 

キーコーキーコー…

食事も終わって、つかの間の逢瀬も終了、とまたも青キジの自転車で道なき海をエニエスロビーへ向かう。

 

「ね、楽しかった?」

「……不覚にも、凄ェ嬉しかったです」

「そ、よかった」

 

キコキコキコ…

 

「………」

「………」

「…大将」

「何?」

「……今度は、あらかじめ予定教えといてもらえません?」

「ん?」

「今度は……その、俺が作りますんで」

「………マジで?」

「マジですよ…って、前見てくださいや、大将っっ!!」

「あ、ごめんごめん」

「俺ら二人共泳げないんっスよ!?」

「んー、抱きついてくれるのは嬉しいけど、それは流石にマズいね」

 

思わず抱きついたジャブラに喜色を滲ませながら、再び運転に集中しはじめる青キジ。

 

「………ねェ、今俺凄ェジャブラにキスしたいんだけど」

「ダメですよ」

「えー…何でよ」

「運転に集中して貰わねェと困るんで」

「じゃ、島についたらしていい?」

「………ダメです」

「えー…どうして…」

「俺からするんで」

「………」

「………」

「………すっごい濃厚なやつ、期待していい?」

「………善処します」

 

いつもならば、時間になるのが惜しくて仕方がないのだけれども。

今日ばかりは島に送り届けるのが楽しみで仕方がない。

幸せというのはこういう状態を言うのだろうか…。

とりあえず、着いたら背中にいるこれだけ無意識に自分を喜ばせる達人を息も出来ないぐらい抱きしめてやろうと思いながら、青キジは自転車をこぐスピードを速めた。

 

FIN

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でもってエニエス到着後。周りには海兵がいっぱい(笑)

 

ジャブラ「ちょ……苦しいんですが」

青キジ「んー、だって抱きつきたいんだもの」(ジャブラをぎゅううっと抱きしめ)

ジャブラ「いや、あのギャラリーめっちゃいるんですが…」(滝汗)

青キジ「んー?気にしない気にしない…それより、着いたらちゅーしてくれるんじゃなかったの?」(小首かしげ

ジャブラ「こ、ここで!?」(がぼーん)

青キジ「なーにー?男に二言があるっての??」(にっこり)

ジャブラ「………あの」

青キジ「ん?」

ジャブラ「剃!!」(青キジを抱えて拘束移動)

 

狼の間にて。

 

青キジ「あーらら、ここジャブラの部屋じゃない…っ!?」

ジャブラ「ん……んぅっ」(とりあえず不意打ちでキスしてみた)

青キジ「(うわ……可愛いねェ、ホント)」(とりあえず舌入れてみる)

ジャブラ「っ!?(の、濃厚なのってこんなんか!?)」(とりあえず慣れないながらも舌絡めてみる)

 

たっぷり10分後。

 

ジャブラ「ちょ、な、長すぎ…」(ぜいはあ、酸欠)

青キジ「あら、この後、俺の方からしようと思ったのに」

ジャブラ「酸素足りなくて死にますっっ!!」(涙目で机ばんばーん!!)

青キジ「んじゃ、このぐらい?」(んちゅ、と鼻頭にキス)

ジャブラ「!!!」(赤面)

 

と、いう訳で亜紗様リクエスト『キジジャブ甘々』でした。

いやー、かなりノリノリでベタ甘になってしまいましたが、楽しかったです。

でもって、キャラトークも勝手にやってろバカップル状態にしてみました(ツッコミ不在)

米粒ぺろりは甘々の王道シチュだと思います、個人的に。

……膝枕も捨てがたいですが(聞いてません)

ともあれ、リクに添えているか不安ですが、こんな感じに仕上げさせていただきました。

遅くなってしまって申し訳ありません。例によって返品OK、苦情、コメントどんと来い!ですので(苦笑)

それでは亜紗様、素敵なリクエスト、どうもありがとうござましたー(ぺこり)