で、翌朝。

 

「お゛え゛ぇぇぇぇ…っ!」

 

朝起きぬけからずっと吐きっぱなしのジャブラ。

それはもちろん、周りに玩具にされている(とジャブラは思っている)ストレスから、深酒をした結果ではあったのだが。

 

会議になってもやって来ない、とカリファがジャブラの部屋にやって来たときも、その状態だった訳で。

 

「…そういうことね」

 

ジャブラの状態だけ確認すると、カリファは会議室へ踵を返した。

 

 

 

「おう、ジャブラはどうした?」

「長官…正直に仰って下さい、あれだけ言ったのにジャブラに手ェ出したの、この無能っっ!」

「ぐぉ、だ、出してねェって、ってか息っっ!手、は…なせェ゛…っ!!」

「そう、長官じゃないのね」

「カリファ?どうしたんじゃ??」

「じゃ、アンタがヤったの、長っ鼻!!」

「は?いや、ちが…っぐる゛し……っ!!!」

「カクでもないの…じゃあとは一人しかいないわね、この大馬鹿猫っ!」

「貴様…死にてェの……っ!?」

「死にたいのはアンタの方でしょっ!?ジャブラは今女の子だって言ったのに!!」

「ま、待て……鞭で首を絞めるな……い、息がっ!」

「残るは貴方しか考えられないのよ、ルッチ…何でいきなり妊娠させてんのよ」

「は?ちが……そんな覚えはな……っ!」

「覚えがないですってェ??相当死にたいらしいわね」

「ぐ、ぐぉ……っちょ、ま…って、くれっ!」

 

カリファが戻るや否や、会議室はあっという間に地獄絵図。

手当たりしだいに該当しそうな男共を真紅の絨毯へと沈めていく。

しかし、妊娠したというフレーズを聞くと、屍たちはイッキに生気を取り戻した。

 

「何だと、それ誰の子!?俺の子かァ??」

「いやいや、あんだけ普段仲がいいんじゃ、ワシの子じゃろ」

「なるほど、これはもう責任とって俺の嫁に…」

 

いやいや、っていうかカリファの溺愛の隙をぬってそういう可能性のあることしたのか!?

 

「いや、誰の子なのよ、結局」

 

「俺だって!」

「ワシじゃよ!」

「俺だな、当然」

 

盛り上がりも最高潮。

結局3人が3人とも、自分の願望のまま自分の子だと主張。

思い思いに幸せな家庭像まで妄想中である。

と、そのとき。

 

 

「あ゛ー遅れて悪ィ」

 

後ろからかかる声は、話題の主のもので。

 

「おい、ジャブラ安静にしてろよっ!……?」

「おまえさん、歩き回ってどうするんじゃ!……?」

「流産でもしたらどうするんだ、バカヤロウ!……?」

 

三者三様にジャブラに近づくのだが……本日のジャブラの服装はいつもの通り。

つまり、女物ではなく、カンフー服で、前を空けていても何ら問題ない状態。

ぶっちゃけ、体が戻っているということだ。

 

「あら?何で女の子じゃないの?」

「あのなァ、これが基なんだよ!」

「…折角妹ができたのに」

「冗談だろ…つーか、流産って何だよ」

「……盛大に吐いてたから、てっきりつわりかと」(眼鏡、クイ!)

「成程……って、何だよ、そりゃ!!」(滝汗)

「ジャブラ!俺の子ができたんじゃないのかっ!?」(ジャブラの手にぎにぎ)

「ふざけんな化け猫!とうとう頭イカれたのかよぉ…っ!?」(ルッチの手を振り払いつつ)

「せっかくワシとジャブラの愛の結晶が実を結んだと思ったのにのぉ…」(溜め息)

「いつ、どこで、誰と誰の間に愛なんてもん芽生えてんだよっ!!」(机だんだーん!)

「何だよぉ…責任とって結婚する気だったのに」(しょぼん)

「…んなことでしょぼくれないでくださいよ、長官」(長官の頭ぽんぽん)

 

三者三様に、現実はショックだったようである。

ちなみに、ジャブラの体が戻ったのは、飲みすぎのせいで吐いて吐いて吐きまくったから、体から毒素が出て、戻ったのではないかというのがカリファの見解だった。

 

ちなみに。

この後、勉強の大嫌いな長官や、行動第一の暗躍集団のナンバー1・2が揃い踏みで資料室で研究をする姿が目撃された。

何でも、もう一度『奇跡の現象(笑)』を起こして今度こそ既成事実を作るのだとか。

 

 

「ふふ、モテる男は辛いわね」

「…勘弁してくれよ」

 

カリファの部屋で特性の紅茶をご馳走になりながら、ジャブラはげんなりしたようすでテーブルに突っ伏す。

それを見ながら、カリファは鈴の音のような涼やかな笑い声を上げていた。

 

「で、もし薬ができちゃったら、貴方どうするの?」

「どうもこうもねェ!俺ァ絶対ェ嫌だぞ、既成事実とかいうのはっ!!」

「……大変ねェ」

「オマエ…他人事だと思ってっっ!!」

「そんなこと思ってないわよ?」

 

絶望にうちひしがれているジャブラをチロリと横目で見ながら、カリファはティーサーバーを取り上げた。

そうして、空になった自分のカップに紅茶を注ぎながら、もしそんなことになったなら、自分の方が先に既成事実を作ってしまえばいい、とこっそり笑みを浮かべる。

しかし、そんな考えは全く見せることなく、優雅に笑いながらジャブラに紅茶のお代わりを勧めた。

 

FIN

_ _ _ _ _ _ _ _ _

 

カク「あ、長官…それ違…っ!」

スパンダム「…え?」←薬品入れちゃったらしい

ルッチ「……何か、煙が出てきたが」

 

ちゅどーん!(爆破音)

 

どうやら、なかなか奇跡を起こすのは難しい模様(笑)

 

ジャブラ「……なっか資料室吹っ飛んでたぞ」(滝汗)

カリファ「また?もう資料が傷むじゃない」(ご立腹)

ジャブラ「いや、傷むっつーか……(そういう問題?)」

カリファ「…どうせなら、全員共倒れすればいいのに」(ぼそり)

ジャブラ「ん?…何か言ったか?」(小首かしげ)

カリファ「いーえ、それよりお代わりどう?」(物凄くイイ笑顔で)

 

今日もエニエスロビーは平和な模様。

 

という訳で、ジュリィ様リクエスト『女ver.ジャブラ妊娠疑惑』でした。

いやはや表のリクの中で最長の小説となってしまいました。ぐだぐだ長くてすみません…(泣)

そしてまさかのカリファオチです。ホントすみません、カリファ大好きなんです!

そんな訳で、趣味に偏って、またもやリクに添えているか怪しい作品がまた一つ出来上がりました(滝汗)

何というか、にょたジャブにセクハラするカリファが書きたかったんです。

でもって、男性陣はみんなお馬鹿。ほんとに暗躍機関の諜報部員なんですか?的な。

個人的には凄く楽しいリクエストでした。

で、ノリノリで書いたら、カリファの出番が大幅に増えるという…(笑)

果たしてこれでご満足いただけるか疑問ではありますが、献上させていただきます。

例によってクーリングオフOKなので、何かありましたらお申し付けくださいませ。

コメント(苦情もOKです:笑)も受け付けてます★

それではジュリィ様、素敵リクエストどうもありがとうございましたー(ぺこり)