「悪ィ、遅れた…」

ジャブラの謝罪の言葉など気にならなかった。

一番気になるのは、いつもとちがう服装。

 

 

所有印

 

 

昨夜はルッチが部屋に来ていた。

……アイツが俺の部屋に来て、やる事なんて一つだけどよ

それでも、ちゃんと頼んだのだ。

痕だけは付けるな、と…

 

それがどうだ、朝見てみれば盛大に花が咲いている。

鎖骨から腹部にかけて、それはもう盛大に。

これでは、いつもの風通しのいい服装にはできない。

そこへ…

 

トゥルルルル

 

電伝虫が音を立てた。

 

「…もしもし」

「てめェ…起きてんじゃねーか!」

「長官?」

「寝ぼけてんのか!コラ!!今日は朝から定例会議だっつっただろ!!」

「あ…」

「とにかく、すぐ来いよ!!」

 

言うだけ言って、切れてしまった。

 

「ヤベ…」

 

クロゼットの中には別の洋服もあったのだけれど。

仕方ないと、馴れ親しんだ服に袖を通した。

 

 

「悪ィ、遅れた…」

それが、会議室に入って開口一番の言葉だった。

だが、そこに集まっていたCP9の面々は、その言葉を気にはかけなかった。

明らかにいつもと違う着こなしのほうが気になったからだ。

 

「おい、どうしたんだよジャブラ」

「いや…ね、寝坊でよぉ…」

「いやいや、長官はオマエの服のことを言っとるんじゃ」

「一体、どうしたの?」

「…いつもと同じだろ…」

 

そう、着ている服自体はいつもと同じ。

 

「よよいっ、どうして前全部閉じてェるんだぁぁ?」

「チャパパ、不思議だー」

「い、い、い、いや、今日…寒くてよ…」

 

そう、どうしても困ったジャブラは、いつもの服で前を全部閉じていたのだ。

 

「今日の最高気温は40度近いそうよ、ジャブラ」

「い!?」

「…てめェ…ナニ隠してんだ?」

「なななな…何言ってんだ、長官!それよか会議だろ」

「怪しいのぅ…」

 

全員が興味津々で、もう会議どころじゃない。

 

「ええい、面倒だ!カク、剥け!!」

「OK、ボス」

「え゛…ちょ…カク!?」

「長官命令じゃからの〜仕方ないじゃろ〜」

 

もはや、物凄く嬉しそうに隣のジャブラの服を開こうとする。

 

「ちょっと待゛て〜!!」

 

じたばた抵抗をしていると、ふいにルッチと目が合った。

(〜っテメッ!呑気にコーヒー呑んでねーで助けろ!バカ猫!!)

何せ、今自分がこれだけの窮地に立たされているのは全部ルッチのせい。

 

「む〜、面倒じゃの…」

「じゃ、お手伝いしましょうか?」

優雅に紅一点の声が響き、ジャブラの両手足はトゲ鞭に拘束される。

 

「カ〜リ〜ファ〜!!」

「ごめんなさいね、でもすごぉく興味があるの」

「これで楽になったの〜」

 

絶体絶命。

と…

 

「うるせぇな…」

すっと立ち上がると、ジャブラの方へ近づくルッチ。

 

「オマエも、そんなコソコソしてるから悪いんだ、バカヤロウ!!」

「な!!!?」

「堂々としてりゃ問題ないだろう」

 

バ…ッ!

 

言うが早いか、ルッチはジャブラの上着を前開きにした。

いっそ、清々しいくらい勢いよく…。

 

「*Щ○∀×◇√…っっ!?」

 

ジャブラの奇声が、室内に響き渡る。

 

「うわ〜、凄ぇな…」

「成程これは…隠したいわね…」

「びっくりっしょ、シャウ!」

「………」

「よよい、これぁ見事!」

「チャパパ、キスマークだー」

「剥いてこんなんじゃと、確実に萎えるの〜」

「それが狙いだ、虫除けだからな」

 

そんなジャブラをよそに、会話を続行する他の面々。

 

瞬く間に、ジャブラは真っ赤になった。

 

 

 

カリファに拘束を解かれるや否や、ルッチの胸倉を掴みあげる。

「てんめぇ…ルッチ!何しやがる!!」

「別に、隠すほどのことでもないだろう」

「この…ボケがぁぁ!!」

「あぁ、オマエだけでは不公平か」

「ンァ??」

 

ジャブラに詰め寄られても全く動じないのはさすが凄腕諜報部員。

さらに、そのまま自分のネクタイを緩め、上から3段ボタンを開けた。

 

「…何…してんだ?」

「オマエ一人では嫌かと思ってな」

「へ??」

「まぁ!凄い歯型ね」

「っ!?」

 

カリファの言葉に、よくルッチを見ると、その首筋には立派な歯形が。

 

「ななななな…!!!」

「こりゃまた凄いな…」

「別に…いつもの事だ」

「…お盛んじゃの〜」

 

羞恥で死ぬことがあるのなら、まさしくこの瞬間だと思った。

あの歯型をつけたのは…自分。

噛んだ記憶などなかったが、おそらくそういうことなのだ。

つけた状況など…考えたくもなかった。

 

「てめ…何で…そんなもん」

「あぁ、昨日は久々に凄かったからな…覚えてないか?」

 

そう言いながら、ジャブラの髪にちゅっと口付ける。

 

「ばかやろぉぉぉぉぉぉぉ……―――っ!」

 

居たたまれなくなって、ジャブラは絶叫しながら自室に駆けていった。

その速さは、「剃」使用時以上に高速だった。

…あまりに可哀相で、かける言葉もない。

長官ですら深く同情して、今日のジャブラの分の任務をブルーノとカリファに割り振った。

 

 

「?一体何が気に入らなかったんだ?」

 

一人、ルッチだけが心底不思議そうに小首を傾げていた。

 

 

ちなみに、この一件以降[ジャブラの服装について触れることなかれ]が暗黙知になったんだとか。

 

合掌。

 

FIN

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ジャブラ「このバカ猫アホ猫ボケ猫」(ボカスカと枕で殴り)

ルッチ「……そろそろ機嫌を直せ」(別に痛くないし、可愛いので殴られ中)

ジャブラ「〜っ皆にバレたんだそ!?」(さらに枕で殴り殴り)

ルッチ「公認ってのはいいものだろ」(やっぱり可愛いので殴られ中)

ジャブラ「モノによるわっ!!」(勢いよく後頭部に枕ぶつけ)

 

という訳で、麻瑳サマのリク『ルチジャブでギャグ甘』でした。

リク内容に添えたか疑問ではありますが…こんな感じでよろしかったですか〜?

何かありましたら、また拍手や掲示板で言っていただけると嬉しいです。

素敵なリクエスト、どうもありがとうございました(ぺこり)