はぁ…っ

こんな体質直してェんだけどよぉ…

そう簡単にはいかねェんだよな

 

 

自覚

 

 

「任務完了しましたぜ、長官」

「そぉか!よくやったジャブラ!!」

 

任務完了を長官の執務室へと報告に行く。

長官は笑みを浮かべたまま、ジャブラの肩を叩く。

もっとも、それは労いの意をこめた、親愛の印でしかないのだけれど。

ビクリ…

どうにか平静を装おうとしても、どうしても身体が震えてしまう。

 

「悪ぃ…大丈夫か?」

「いえ、気になさるほどのことでもないんで」

 

その反応を見て、気遣わしげな長官に悪いと思い、慌てて否定をした。

けれども、胃の辺りに重く、なにかが溜まっていくような感覚は拭えなかった…。

 

 

 

 

「気持ち悪ィ…」

 

退出して、初めに嘆いた台詞がコレ。

自室まで辿り着くことも出来ず、廊下の壁に凭れ掛かった。

…やべェ、吐きそうだ…

本当に、情けない体質だと心底思う。

こんな外見してる俺が、まさか『男性恐怖症』だなんて、笑い話にもならない。

それでも、CP9の大半は男で構成されているし、衛兵のほとんどは男。

だからこそ、この体質は隠しぬく必要がある。

ま、CP9のメンバーには、仕方ねェから『接触が苦手だ』と言ってあるのだけども。

それでも、先刻のように何の気なしに触れられることはあるのだ。

 

幸い、ウチには紅一点のカリファがいるから、何かあるならアイツを通せばいい。

それでも、なんとか改善できるようなら、直したかった。

 

 

 

「う゛ぅ〜……」

結局、あの後かなり苦労して部屋までたどり着いて、精も根も尽き果てている。

俺はこのまま眠ってしまいたいとばかりにベットへと身体を沈めた。

 

 

 

「おい、ジャブラ!!」

 

覚醒したのは、その声が聞こえたから。

 

 

「んだよぉ…テメェ…ノックぐらいしろよな、馬鹿猫」

「バカはどっちだ…何回ノックしたと思っている」

「え゛…っ」

どうやら、自分は思っていたよりも長く眠り込んでいたらしい。

それは、ルッチの眉間に刻まれた皺を見ても明らかだった。

「ノックの返事はないが、鍵が開いていた」

「………」

そりゃ、寝る気なんかなかったから、閉めてもねェよな…

「わざわざ中を覗いてみれば、オマエが呑気に寝ていた、と」

「………」

淡々と告げられる事実は、ジャブラにとって屈辱的なもの。

だが、ルッチに迷惑をかけたことは、まぎれもない事実だった。

 

「………悪ィ」

「そんな素直だと気味が悪いな…」

「何だとっ!!」

「……その意気だ」

萎れたジャブラなど興味はないと言わんばかりに、ルッチは跳ね起きたジャブラに書類を突き出す。

「長官からだ」

「あ゛!?…ぉう、さんきゅ」

出鼻を挫かれたようで腑に落ちなかったが、今はコレを受け取ることが先決だろう。

と…。

 

「うわ…っ!?」

「っ!?」

 

受け取ろうと伸ばしたジャブラの手が、ルッチの手に触れる。

それは、本当に些細な接触だったのだけれども。

ジャブラにとっては耐え難く、大げさに身体ごと手を退いた。

 

ぱさり…

数枚の書類が、床に散る。

 

「………」

「………」

重い、重い沈黙。

先に破ったのは、意外にもルッチの方だった。

 

「これか?例の『接触嫌い』というやつは」

「………」

ジャブラは答えない。

だがそれは、無言の…肯定。

「くだらねぇ」

「なっ!?」

人が本気で悩んでいることをくだらないと一蹴するこの男。

憎らしかった。

直せるものなら、とっくに直しているというのに。

 

「こんなもんに左右されるな、バカヤロウ」

「……るせェっ!」

こんな台詞を吐かれるなんて、屈辱以外の何者でもなかった。

 

がし…っ!

不意に、ルッチの両手が伸びて、ジャブラの両の手を拘束する。

そのまま圧し掛かられて、ベットがきしりと音を立てた。

「……やめろっ!!」

気色悪かった。

握られた部分の熱が体中に回るような感覚。

それは、長官に触れられた時の比ではない。

胃がぐるぐると回る感触。

 

キ モ チ ワ ル イ 

 

壊れるかと…思った。

 

「直して……やろうか?」

「何!?」

「こんなのは…他人による快楽を知っちまえばいい」

「……どういう…意味だ?」

台詞の意図が…掴めない。

 

「こういうことだ」

「んぅ…っ!?」

 

いきなりルッチの身体が急接近したと思うと、そのまま唇を重ねられる。

それは熱くて、熱くて……頭の芯から麻痺させるような感覚。

 

 

それは、触れてきたのと同じ唐突さで離れていく。

同時に、拘束されていた腕も自由になった。

 

「テメェ…何のつもりだ!?」

ごしごしと自分の唇を拳で拭い、ルッチを睨みつけるジャブラ。

「まだ……気分が悪いか?」

「あ゛!?……ぅ…?」

おかしなことに、吐き気が全くしなかった。

これは一体どういうことか。

 

「直ったか」

「ば…っか、違ェよ!!」

 

違うと思いたい。いや、絶対違う。

あんなに困っていたことが、こんな形で直ったなんて。

 

「次は……もっと先に進むからな、覚悟しとけ」

 

そう言って、ルッチは踵を返す。

 

一人残されたジャブラは、ただ呆然と虚空を見つめることしか出来ない。

 

「マジかよぉ…」

やっと発することの出来た言葉は嘆きで、そのままベットへ突っ伏す。

 

よくよく考えてみても、他のやつにルッチにされたような真似されたら、確実に吐く。

それだけが確実に分かること。

それ以外は………よく、分からない。

もう、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

 

 

唇に残る熱は、まだ消えそうにない……。

 

FIN

_ _ _ _ _ _ _ _

 

ジャブラ「アイツ、何考えてんだよぉ…」(ガッデム!と頭抱えモーション)

ルッチ「もちろん、年中オマエのことだけだ」(しれっと)

ジャブラ「開き直んな、バカ!!」(嵐脚!)

ルッチ「………本心だが、それが何か?」(剃!)

ジャブラ「大問題だ!あんな状態なのに……あんなことっっ!!」(オマエは鬼か!!)

ルッチ「効果覿面だっただろう?」(ニヤニヤ)

ジャブラ「〜〜〜覿面どころか、トラウマものだぁぁぁぁぁっ!!」(机叩いて異議ありぃっ!!)

 

と、いう訳で朱音様リクの『男恐怖症なジャブラでルチジャブ』でした。

え〜っと…こんな感じでよろしいですか?

私としては久々にシリアスルッチを書けて楽しかったんですが…リクに沿えてるかなぁ…(ビクビク)

何かコメント等ありましたら、何でもどうぞ★……返品も可ですので(笑)

楽しめるリクエストありがとうございました(ペコリ)

お待たせしてしまって、申し訳ありませぬ〜っっ