「他のガキと目が違うじゃない」

初めて見た時…そう、思った。

「周りの役人と違う…血の匂いを纏う人間」

あの人が訪れた時…そう、感じた。

何が理由かって?…本能的になものよ。

何が理由かだと?そんなん本能に決まってんだ狼牙。

 

 

平行線

 

 

俺のサイファーポール行きが決まった時、あの人は現れた。

他の人間とは違う、高圧的な何かを持つ男。

周りから聞こえる噂で、彼の人が「クザン」という名の中将だと知った。

かなりの強さで戦場を我がものにしていた男だと。

 

サイファーポールの中でも9番目に入ることになった俺。

本来“存在するはずのないところ”が俺の居場所。

ここに来てから、クザン中将を目にする回数が増えた。

いや、大将になった時、名が変わったそうだ。

存在するだけで、目を釘付けにするカリスマ性は、心底凄いと思った。

 

長官のきまぐれで彼の技を見る機会に恵まれた。

俺はあの時を、生涯忘れることはないと思う。

何せ、本当に…背筋が凍るかと思ったほどだったのだから。

 

圧倒的な、強さ。

 

俺の望んで止まないもの。

それを持ちながら、さらに高みを目指すその姿に憧れた。

どうしようもないくらいに。

一途に。ただ、一途に。

 

 

 

 

俺の大将昇格が決まった日、あの子を見た。

それは、若くて強くて…内に獣を宿す青年。

訓練生は何人も見てきたけど…目が違っていた、そいつだけ。

その「ジャブラ」とかいう彼は、サイファーポール行きの決まったボ−ヤだった。

 

彼を見た時から、なんとなく気に掛かる存在になった。

だからだろう、司法の島に来る理由を見つけては自ら赴いてtる。

そうしてここに来る度に、あの子を探すのだ。

何が原因かなんて分からないが、その姿が見えないと落ち着かなかった。

 

ほんの些細なきっかけで、彼の前で能力を使った。

ヒエヒエの実の氷結能力。全てを凍らせる力。

彼はそれを見ても、動じなかった。

大した根性だ。本気で、そう思った。

 

彼の目はまっすぐ前を見ていた。

強くなりたい、という願いが痛いほど伝わってくるほどに。

強さに驕らず上を見つめ続ける姿勢に惹かれた。

どうしようもないくらいに。

強く。ただ、強く。

 

 

 

「お?」

「あ…っ」

 

双方の思いとは裏腹に、二人の会話は一度も成立したことなくて。

この日が初めてだった。

 

「…久しぶりねぇ」

「……ッス」

「あらあら、警戒してる??」

「ちょ…長官なら執務室に…」

「……そんなに俺嫌い?」

「っ!!」

 

驚いたように顔を上げてブルブルと頭を振るジャブラ。

この年で、反応まで可愛らしいと内心笑む青キジ。

殺し屋などという立場で純粋に笑ったり怒ったりできる彼が少しだけ羨ましいと思っていたので。

とはいえ、これ以上ジャブラの邪魔をしても可哀相だ。

 

「ま、無理せず強くなんなさい」

「!」

 

ぽん、っと軽く頭に手を置くと、スパンダムの元へと向かった。

 

 

 

青キジの姿が見えなくなると、ジャブラはそっと頭に手をやる。

そこは先ほど青キジが触れた場所。

憧れて止まないあの人から声を掛けられるとは思わなかった。

嬉しい。嬉しい。嬉しい。

小さく笑みを形作る。だって、自然に零れてしまうから。

だけれども。

寂しい。寂しい。寂しい。

戸惑いながらできた小さな笑みはすぐに消えた。だって分かっているから。

自分と、あの人との違いを。

 

ア ノ ヒ ト ハ ツ ヨ イ

 

そう、それも圧倒的に。自分なんかが憧れていい位置になどいない。

自分なんかが、近づきたいと望んでいい位置になどいない。

あのひととの距離は、遠すぎるから。

それが辛かった。ただ、辛かった。

 

望みなど、持ってはいけない。

あの人と俺は、決して交わることのない平行線なのだから。

 

 

 

 

「何かいいことでも?」

「ん?何?俺嬉しそう?」

「すっごく」

「ん〜確かに俺機嫌いいねェ」

「まァ、だからこそこうしてご足労願えるんでしょうが」

「そーね」

 

一方、こちらは長官の執務室。

長官との会話をして仕事を進める姿は流石なのだが…何か違う。

先刻から、自分の大きな手を眺めては嬉しげな青キジの様子。

好奇心から尋ねると、怒声が返るかと思いきや、同意される始末。

…いつもの青キジからは、考えられなかった。

そんな彼を見てはてなを飛ばしまくるスパンダムを尻目に、青キジは尚も続ける。

 

「ねェ…」

「な、なんでしょう?」

「あの子…どう思う?」

「あの子?」

「ん〜ジャブラ、って言ったっけ?」

「あァ、アイツね……腕はかなりのもんですが」

「ふぅん」

「それが何か?」

「ん?いや、あの子いいなァって」

「……は?」

「うん、何か気に入ってんのよ、俺」

「………」

 

これは何かの聞き違いじゃないだろうか。

この男が気に入らないならまだしも、誰かを気に入ることがあるとは。

 

「ね、あの子…構っていい?」

「え……ぁ、ど、どうぞ?」

「そ、じゃ好きにするわね」

 

そうしてゆるりと立ち上がると、窓から下を眺める。

そこには、見慣れた後姿があった。

まずはどうにか…懐いてもらわねェとなァ…

だって、あれほど警戒されていたら、近づくのも難しいのだから。

最も、逃げられたら余計追いたくなる性質なのだけれど。

 

相手が自分に近寄らないのなら、自分から捕まえるしかない。

いつまでも平行なままじゃ、距離なんか縮まらないのだから。

 

 

平行線。

それはどこまでいっても、等距離を保つもの。

どこまでいっても、決して交わることのないもの。

だが、ジャブラは失念していたのだ。

平行線とは、片方に少しでも傾きができれば、いつかは交わるものだということを。

 

彼がそれに気付くとき。それは…。

青キジが、彼を手中に捉えたとき。

 

それは明日かもしれないし、十年、二十年先かもしれない…。

 

FIN

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青キジ「あらあらワンちゃん純情なのねェ」

ジャブラ「た、大将とは違うんですっっ!」(焦)

青キジ「そーねー、俺は狙った獲物は逃さない派だから」(ジャブラ抱きしめ)

ジャブラ「っ!」(赤面)

青キジ「ん?抵抗しないの?」(おや?)

ジャブラ「だってよォ…大将に抱きつかれんの、キライじゃねェからっっ」(耳まで真っ赤)

青キジ「そーゆー可愛いこと言うもんじゃないでしょ」(喰うよ?ここで)

ジャブラ「……可愛いっての止めてください」(む!)

青キジ「はいはい、もう言わない言わない」(でもジャブラ抱き抱き)

ジャブラ「………」(納得いかないものの、反論できない)

 

あ〜らら、なんかお暑いですねェ…冬なのに。ちゃぱぱぱ〜♪

 

という訳で、jack様のリク『シリアス系でジャブラ受』でした。

いや〜、お待たせしてしまって本当に申し訳ないっっ!!

シリアスということで、ちょっと書き方に拘ってみたんですが…どうでしょう?

そして相手はオトナな青キジ大将にしてみました。キジはギャグもシリアスでも動かしやすい♪

あ!ご意見などコメントありましたら気軽にどうぞ〜★無論、いつものように返品OKです。

楽しいリクエスト、どうもありがとうございました(ぺこり)