「………」

執務室に入ると、緊急招集をかけられたジャブラは絶句した。

別に、室内に以上があるとかそういうことではない。

ただ、中にいる人物を見て、二の句が次げなかったのだ。

 

 

White or Black

 

 

「「おぅ!来たかァ!!」」

 

中の人物は、凍りついた彼をものとのせず、話を進める。

その外見は、確かに長官そのもの。

けれど……問題が一つ。

 

「……長官」

 

意を決して口を開くジャブラ。

 

「「何だよォ?」」

「その……」

「「?」」

両方とも…長官ですか?」」

 

この奇妙ともいえるジャブラの問い。

しかし、それは当然ともいえる問いであった。

 

そう、室内には二人の人間。

どちらも特有のバンドで顔を固定し、ふわふわの紫の髪をしている。

それらはみな長官の特徴そのもので。

そんな全く同じ外見の人物が、左右対称に動くのである。

全く同じタイミング、全く同じ台詞でもって。

 

「おう!俺もこっちも俺だぞ!!」

「あァ?どうみたってどっちも俺様だろうが!!」

 

前言撤回。

左の長官のほうが仕草や台詞が子どもっぽく、大きな目をしている。

右の長官は態度が大きく、その目つきはすこぶる悪い。

 

「俺らの長官は……一人のはずでは?」

 

「ん?あぁ、ソレなんだけどよォ♪」

「カクが面白ェもんくれたんだよ…」

 

「………」

 

彼らCP9の中で、もっとも薬物の知識に長けた男。

それだけにカクが絡んでいると、毎回ジャブラの被害は大きい。

それは今日も例外ではなさそうだ。

ジャブラは諦めたように大きく溜め息を吐く。

 

「一体どんな“面白ェもん”なんで??」

「ん?えっとォ」

「昨夜のことなんだけどよ」

 

二人の長官は、交互に昨夜の話を語りだした。

 

 

 

そもそも、任務を終えたカクが長官の元を訪れたことがきっかけらしい。

そこで、眉を顰めて考える上司を見て、カクは直感した…面白い、と。

 

「長官…どうしたんじゃ?」

「ん?ちょっと…考えごとだ」

「何を考えておったんじゃ?」

「ん〜、俺多重人格なんじゃねェかと思ってよ」

「………何を根拠に」

「だってよォ…俺、変なんだ!!」

「変?」

「あのよ、ジャブラ見てるとおかしくなるんだよ!!」

 

長官とジャブラが恋人同士、というのはこの島にいる人間なら誰しも知っている。

しかし、ジャブラと長官が一緒にいるところを思い出しても、不思議な点はないように思うのだが…。

本人がそう言うからには何か気になる点があるに違いない。

面白い…カクはこっそりと笑みを浮かべる。

 

「一体何がおかしいんじゃ?」

「あのよ、アイツ見てると優しく大事にしたいんだ!」

「ほうほう」

「でもよ、やっぱりアイツ見てると苛めて泣かせたいとも思うんだ!!」

「ふむふむ」

「こんなのおかしいだろ、このままじゃ俺嫌われるんじゃねェか?」

「………」

 

なるほど、長官の悩みとは彼のジャブラへの接し方についてらしい。

確かに、普段(長官にしては)ワガママを抑えて可愛らしく甘えている。

かと思えば、無理難題を言って困らせたり、アレコレと苛めていることも確か。

 

「でもよォ…アイツ、どっちの俺が好きか分かんねェもんな…」

「!」

「オマエ…どう思う?」

「ん〜、いっそ本人に確かめてもらったらどうじゃ?」

「どうやってだよ」

「コレ使ってみれば一発じゃよ♪」

 

ごとっと、どこからともなく出される小瓶。

中身はいかにも怪しげなビリジアンの液体だ。

 

「………何、コレ」

「コレを呑めば一日、長官は二人に分かれるんじゃ」

「?」

「優しくしたいほうの長官と、苛めたいほうの長官にじゃな」

「!!」

「これで比較させれば簡単に分かるじゃろ?」

「さすがカク、頭いいな!」

 

 

 

とまァこんな調子で…受け取ったのだ、その怪しげな薬を。

で、ジャブラを呼び出した後に一気に呷ったらしい。

……副作用は大丈夫なんだろうか。

 

「………」

 

全くもって、呆れてモノも言えない。

 

「でも、アレめちゃくちゃマズかった」

「……確かにな」

「だからよ、口直しにキスしようぜっ♪」

「待て、コラァ!!」

「ん?」

「その前に、どっちが好きか確かめんだろうが」

「あ、そっか」

 

何やら話をつけた挙句、左右からジャブラを拘束した。

 

「うをっっ!」(速っ!)

「「ジャブラ」」

「な、何です?」

「もちろん、ジャブラは俺のが好きだよな?」

ひしっと腰に抱きつきながら、上目遣いで尋ねる白長官。

「え゛…」

「嫌いなのかァ??」(涙目)

「いや、そんなこたァねェけどよォ」

「んじゃ好きだろ?」

「え、そりゃまァ…」

「ほ〜、俺よりもソイツのがいいのか?」

答えようとした瞬間、耳元で低く囁く黒長官の声が。

「!!」(ビク!)

「クク…オマエ、ほんと耳弱いよな?」(耳に噛み付き)

「ちょ…ヤメ……っ!!」

「あ!ズルい!」

「ん?」

「何で選ぶ前に手ェ出してんだよ!黒い俺!!」

「お子様は引っ込んでろよ」

「何だとォ…ぶぁかっオマエなんか苛めることしか能ねェくせにっっ!」

「な…うるせェよ、ぶぁかっコイツは酷くされるのが好みなんだよ!!」

 

などと二人して取り合いをされるものだからたまらない。

いつもの倍の疲労感だ。

 

「ジャブラだって俺のがいいよな?」

「当然俺様だろ、イエスと言え」

 

などと詰め寄られて、どうコメントできようか。

 

「いや……答えられねェだろ、ソレ」

「「何!?」」

「だってよ、どっちも長官だし」

「「………」」

 

今の一言に二人の長官は全く同時に反応した。

それは、どちらも不服だという意思表示。

 

「仕方ねェな…」(押し倒し)

「え゛…一体何してんです!?」(焦り)

「オラ、白、オマエも来い!」

「う?……お、おう!」(ちょっとドキドキ)

「あァ、コレがいるよな」(海楼石の手錠がちゃり)

「ななななな……っ!?」

「うわ〜、うわ〜」(いいの?いいの?)←この辺がお子様

「見た目じゃ判断できないなら、身体で分からすまでだ」(ペロリと舌舐めずり)

「ちょ……っ!?」(真っ青)

「ら、乱暴にすんなよ!」

「何だ、オマエここで戦線離脱か?」(ふふん)

「何を〜、俺だってちゃんとできるもんっっ!」(ぷんすか)

 

などと揉めながらも、見事なチームワークで服を脱がせようとする。

これにはジャブラも焦って抵抗するものの、手錠のせいで上手くいかない。

 

「ちょっと待でェェェッェェエ…っっ!!」

「「待てない」」

「いや、落ち着けって、な?」

「いいからおとなしくしてろ、天国見せてやっからよ」

「ジャブラ!お、俺!頑張るからっっ!!」

 

二人共留まる気など毛頭ないようだ。

かくして、二人の長官によるジャブラ取り合いの第二幕は幕をあけた。

 

 

ちなみに…。

その日、執務室からはこの世のものとは思えない絶望の悲鳴が響いたのだとか。

 

 

FIN

_ _ _ _ _ _ _ _ _

 

カク「で、結局ヤったのか、変則3P?」(ニヤニヤ)

ジャブラ「変則3Pとか言うなァァァッ!!」(赤面で机バンバン)

カリファ「同じ人間二人と3Pなら十分変則じゃない」(しれっと)

ジャブラ「カ…カリファ……ッ」(セクハラだ、馬鹿!)

スパンダム「む〜」(不機嫌)

カク「?どうしたんじゃ、長官??」(小首かしげ)

スパンダム「……効果が切れた」(むすっと不機嫌)

カリファ「効果?」(小首かしげ)

スパンダム「せっかくいいところだったのに…

      突っ込む寸前になって元に戻っちまったんだよ!!」(机バンバン!)

カリファ「あら…」(残念ね)

カク「何じゃ…未遂か」(つまらん)

 

ジャブラ「てめェらなんか嫌いだァァァァ…っ!!!」(滝涙ダッシュで逃亡!)

 

せっかく誕生月なのに………やっぱ苛められキャラなんです、ワンコだから(笑)←根拠になってない

 

 

という訳で、ちはやぶる様のリク『白パンダと黒パンダがジャブラを取り合う』でした。

大変お待たせして、申し訳ありません。やっと完成です★

大幅に時間をかけた割にリクに添えてるか不安ではありますが…。

とぉっても楽しく書けました、白パンダと黒パンダ♪

お子様VS鬼畜の決着は結局つかなかった形にしてしまいました、こんなんでよろしいですか?

コメントなど何かありましたら気軽にどうぞ〜★いつもの如く返品可でございます(苦笑)

ではでは面白いリクエスト、どうもありがとうございました(ぺこり)