精神安定剤

 

 

 

殺しを許可された諜報部員。

それが、今のジャブラの肩書き。

長官から告げられるまま、影で動き、標的を消す仕事。

それの繰り返しが日常で、それが普通だと思ってた。

いや、自分の中の獣が、血に飢えているのだ。

それを満たすためにここにいる。それが全てだった。

 

 

「よォ…」

「どうした?ジャブラ」

「…別に」

 

ふらり、と唐突に。ジャブラはここに訪れる。

そうして用件を聞くと、必ず「別に」と返した。

それでいて、するりと人のベットに滑り込んで丸まっている。

本当に犬のようだな、とブルーノは苦笑した。

 

「全く、困った奴だ」

「…何がだよ」

「オマエに占領されては、俺が寝れない」

「別にいいだろ、一緒に寝れば」

「あのな…」

 

呆れたように言うブルーノを見ながら、ジャブラは頬を膨らめる。

普段、あれだけ強気に振舞っている男とは思えない仕草。

ここでだけ、彼はそういった幼い仕草を見せることがある。

 

「まったく、そんな顔をしていては他の奴に示しがつかんぞ」

「外ではこんな顔してねェだ狼牙」

「…オマエ、俺が誰かに言うとか思わないのか?」

「…全く」

「全面的な信頼などしないほうがいいと思うが」

「ブルーノはしねェだろ、そんなこと」

「………」

 

にやりと笑いながらこちらを向かれると、何も言えなくなってしまう。

本当に、これだから自分を知り尽くした人間というのは厄介だ。

 

「んじゃそこで寝てろ」

「おまえはどーすんだ?」

「俺は適当にコッチで寝るさ」

 

 

これ以上言っても仕方ない。

ジャブラに塒を譲ってソファで寝ることにでもしようと毛布を持って移動しようとするが…。

 

「とりゃ!」

「っ!?」

 

ぐるり、と自分の視界が反転して、気付けばベットの上に。

その自分の身体の上には、にやりと笑うジャブラの姿。

そう、自分の巨体を投げ飛ばしたのだ、この男は。

 

「オマエな…」

「何だよ、俺は一緒に寝ようっつってんだ狼牙」

「………狭いだろ」

「いーだろ、俺小柄だし」

「………俺が狭い」

「んじゃ我慢してくれ」

「………」

 

本当に、いつも長官をワガママだと言うこいつの方が余程ワガママだ。

しぶしぶ、体制を変えてジャブラを懐に抱えてやる。

すると、小さく笑って動物のように擦り寄ってきた。

 

「こら…」

「こうしてんのが…一番落ち着く」

「そうしてると、本当に犬みたいだぞ」

「ん〜、てめになら飼われてやってもいいぜ?」

「冗談、コッチから願い下げだ」

「ぎゃはは、言うと思った」

 

他愛無い会話。だが、これがどうしてか、とても心地いい。

そうして、俺は自分を取り戻す。

だからこそ、再び本能の赴くままに血を求められるのだろう。

 

パラドックス。

 

はたから見れば、さぞ滑稽なのだろう。

同じことの無限ループ。

ただ…俺にとってはこれが日常。

 

 

そうして俺は、また任務を何件かこなした後…ここへと赴くだろう。

自分の自我を保つために。自分の居場所を理解するために。

精神を…安定させるために。

 

それが、俺の日常の一部。

 

FIN

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新企画っていうか新お題。

・暗い小説が書きたくなりました。

 ・ルッチ兄さんの受率の高さに唖然としました。(いや、ルチ受もキライじゃないですが)

 ・ジャブラ受があまりに少ないことに驚愕しました。

 ・いっそ、もっと小説を増やせば同士が増えるんじゃないかと期待大★

 ・なら、CP9全員とのカプでもやらかせばい〜んじゃない?と勝手に解釈。

 ・殺し屋向けのお題を発見して、決意。「ヤるしかねェ!(親指ブッ立て)」

以上の理由から、またお題を増やしました。

ダメな子でごめんなさい。いろいろチャレンジ初めてごめんなさい。

 

はい、ブルジャブです。抱き枕とテイストが被っててごめんなさい。

どーしてもこの二人はベットでいちゃいちゃしてて欲しいらしいワタクシ。

でもってブルジャブだとどうしてもジャブラがブルーノ大好きみたいです。私にしては珍しい傾向。

あ!でも裏で一つやりたいんですよ、超鬼畜ブルーノを!!!←密かな野望。

ただ、めっちゃ長くなりそうでまだ取り掛かっておりません。はは、ダメな子ですな。