枕が変わると寝られない。
そんな話をよく耳にする。
でも、安眠を貪るためのアイテムは、何も枕だけじゃねーと思うケド。




抱き枕




「ふぅ、疲れた」

任務を終えて自室まで来ると、ブルーノはため息を吐いた。
ルッチがキレそうになるのを宥め、長官には泣きつかれ…酷く疲れる1日だった。
幸いにして、明日はオフにしていいらしい。

とりあえず風呂に入ったら、そのまま寝てしまおう

そう決めると、ドアに鍵をかけ、バスルームへ直行した。






「よう、遅かったじゃねェか」

風呂から上がると、ベットの上にジャブラがいた。
コイツがこうしてココに来るのは珍しくないが、今日のように寝巻なのは珍しい。

「何で俺の部屋にお前が居るんだ?」
「何でって…居ちゃいけねェのかよ!?」

俺からしてみれば当然の問いだと思うのだが、ジャブラは口を尖らせる。
全く、そんな歳でもないだろうに。

「………ドアには…鍵をかけた筈だが…」
「ピッキングで一発」
「…ピッキングってなぁ………」
「ぎゃはは、オマエそんなもんココで役に立つと思ってんのか?」

もはや、呆れて物も言えない。
どこの組織に、自分の同僚の部屋にピッキングで押し入る人間がいるというのか。

………まぁ、ココなら…いそうだな
というか、目の前にいる。



「おい、ジャブラ…」
「ん?」
「俺ァ、今日疲れてるんだ」
「知ってるぜ、大変だったんだろ、ルッチと長官が揃ったんだもんな?」
「知っているなら話は早い。俺は眠いんだ」
「寝りゃいいじゃねェか」
「………お前が居るのに、どうしろと?」
「い〜じゃん、俺、ココが一番居心地いいんだよ」


ニィッと歯を見せて笑いながら、ごろりと寝返りを打つ。
この屈託のない仕草は、この男特有のもの。
本当に、気ままな奴だ。

「なぁ…泊めてくれよ…」
「何かあったのか?」


コイツがこういったことを言い出す時は、必ず何かあった時。


「何で分かんだよ…」
「付き合いが長いんだ、嫌でも分かる」
「ん〜、部屋に居るとアイツ等うるせェんだよ…」
「………」
「もう、おちおち寝てられねェっての」
「で、ここまで来た訳か」
「そういうこった」

はぁ…っ
完全に泊まる気になっているコイツを追い出すのは無理だろう
本日何度目かのため息を吐き、仕方なくそのままジャブラの横へ入った。


「んっしょ♪」


いつものように、抱きついてくる。
この暑いのに、モノ好きなことだ。

「暑い」
「い〜じゃん。俺こーやって寝ると、よく寝れるし」
「…俺じゃなくたって、オマエの抱きつかれたい奴など山といるだろうに」

疲れのせいだろうか、いつもは口にしない本音が洩れた。
すると、抱きついていたはずのジャブラが体の上に上ってくるのが分かる。

「お、おいっジャブラ…」
「知ってるか?」

焦る俺をよそに、ジャブラは耳元で密やかに話す。




「俺が自分から来るのって……オマエの部屋だけなんだぜ?」




「………」

そういえば、そうかもしれない。
ジャブラは、追われることはあっても、自分から出かけていくことは少ない。
これはどういうことなのか。

言いたいことを言うだけいって、当の本人はもう先ほどの体勢に戻っている。
人の体にしがみついたまま、何やらすやすやと眠り始めた。



諜報部員がこんな無防備でいいのだろうか


半ば呆れつつ、俺も寝てしまおうと、しがみついた体を抱きこんだ。
そういえば、俺もコイツを抱いて寝ると、よく寝られる気がする。


お互いが性能のいい抱き枕ということか。
それはそれで、悪くない。

今は、それだけ分かっていれば十分だ。
余計な事を考えるのを一切放棄し、ブルーノもそのまま眠りに落ちた。


FIN
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とうとうブルジャブにまで手を出し始めましたよ?(末期)
この小説…「俺が自分から来るのってオマエの部屋だけなんだぜ?」の一言を言わせたいがために書いたんです!!

ブルーノ相手だと、無防備に甘えられる
そんな自分設定万歳!!




ジャブラ「なぁなぁ、ブルーノ」

ブルーノ「何だ?」(また面倒ごとか?)

ジャブラ「今日、みつあみじゃなくて、編みこみにしたい」(やってくれよぉ)

ブルーノ「はぁ…っ(ため息)分かった、あっち向け」(言っても無駄だからな…)

ジャブラ「んっ♪」(格好良く頼むぜ)

ブルーノ「やれやれ」(シュッシュッとブラッシング)


みたいな?
手先の器用なブルーノにやってもらったりとか。
ルッチとかだと悪戯されるし、長官だとぐちゃぐちゃにされるので。

この二人はほのぼのいきたい感じですね〜
ま、くずのはのことなんで、裏モードもやらかすかもしれませんが(笑)