ほー、寝顔は可愛いもんだな

って、これは男だ狼牙!しかも、散々困らせてくれるワガママ上官。

しかも、この状態だって長官のワガママのせいだってのに。

どうして可愛いなんて馬鹿なこと思ったんだろう。

 

 

ガキに付き合ってられっか

 

 

『俺のモンだ』

 

そう告げられてから、2ヶ月が過ぎた。

ご丁寧に、拒否したらギャシーをクビにするという条件つき。

そんなもの、俺に逆らえるはずもなく…。

今日も長官の呼び出しに応じて執務室へ向かってる訳だ、俺ァ。

 

「失礼します」

「遅い!」

「……無茶言わんで下さい」

「剃使えばすぐだろ」

「そんなもん使ったら、この島の衛兵ほとんどブッ飛んでますよ」

「………まぁいい」

「で、何のご用件で?」

「疲れた」

「は??」

 

いきなり何を言い出すんだか。

呆れたように声を出すと、スパンダムはコチラへとつかつかやってきた。

そうして、ジャブラをソファの上に座らせると、自分もその上に頭を乗せて…。

って!これっていわゆる膝枕ってやつかよ!?

 

「ちょ、長官っっ!」

「うるせェ!オマエは俺のなんだろ!!」

「つーか、こんなことのためにわざわざ呼び出したんで?」

「……悪ィかよ」

 

拗ねたように頬を膨らませながら、スパンダムはジャブラを見つめる。

いや、悪いだろ!

…そう言えたら苦労はしない。

溜め息を吐きながら、長官の頭が落ちないように支えてやった。

 

「……1時間したら、起こせよ」

「へいへい」

 

不遜な態度ながらそう言うと、スパンダムはすぐにすやすやと眠り始めた。

 

 

と、この調子。

自分のモノだと言ってワガママばっかり言うくせに、本気で困ることはしないらしい。

ただ、何度も呼び出しては、一緒に茶を飲めだの、寝付けないから本を読めだのと“命令”される。

こんな日常だった。

 

「………」

 

しっかし、寝付くの早ェな…

苦笑しながら無意識でスパンダムの髪を梳くジャブラ。

その寝顔は、見ていて可愛いと感じるもの。

あんなにふてぶてしくて、人の弱みに付け込むワガママ男だというのに。

膝の上で安心しきったように眠る顔を見ていると、怒りすら湧かないとは。

普通だったら、怒りで八つ裂きにしてもおかしくないような状態にもかかわらず、だ。

釈然としないと思いつつも、ジャブラは膝の上の頭をポンポンと撫でた。

 

 

 

コンコン…

 

思わずまどろんでいたジャブラは、その控えめなノックに目を覚ました。

失礼します、と中に入ってきたのはカリファだった。

 

「あらジャブラ…」

「あーっと…長官起こすか?」

「貴方も大変ね…いいわ、書類はもう出来ているみたいだから」

 

笑いながら、カリファは長官のデスクに堆く詰まれた書類を抱え上げる。

 

「え…その量終わってんのか?」

「ええ、昨夜一晩で仕上げたようだわ」

「…珍しいな」

「あら、最近真剣なのよ、長官」

「へ??」

「貴方との時間を作りたくて、貴方が任務の間に死ぬ気で書類上げているもの」

「………」

「でも、貴方も満更じゃなさそうね」

「はァァァ!?」

「あら、だって長官のワガママ聞くの、最初ほど嫌そうじゃないもの」

「それはっっ!」

「先刻だって、凄く穏やかな顔してたのよ、貴方」

 

その状態でね、と長官の枕状態のことを指しながら、軽やかに書類を持って出て行くカリファ。

ただただ、混乱するばかりのジャブラを残して…。

 

 

 

1時間後。

ジャブラは望まれたとおりにスパンダムを起こした。

 

「おー…んじゃ続きやるか」

「………」

「ジャブラ?オマエ顔真っ青だぞ!?」

 

真っ青になったまま、焦点が定まらずにいるジャブラに、スパンダムは慌てて声をかける。

こんな顔をしたジャブラを見ること事態、初めてだったからだ。

 

 

 

「…………長官」

「お!な、何だ??」

「もぅ……止めましょうや」

「???」

「俺ァ、御免だ」

「な、何の話だ?」

「子どもの気まぐれに付き合うのは、もう御免なんで」

「え…ちょ、待てっっ!」

「気に入らなきゃ、俺クビにしてくださいや」

 

それだけ言って、ジャブラはふらふらと執務室を後にする。

自分がどれだけスパンダムを傷つけることを言っているかなど、承知の上。

でも……仕方なかった。

だって、このままだと自分は何かに捉われてしまうと思ったから。

それだけは避けるなければならない。

だから、仕方なかったのだ。

 

そうして、ジャブラは自室に戻ると、そのまま崩れるように意識を飛ばした。

まるで、現実から逃げるように。

自分の感情から目を反らすかのように。

 

 

To be continued…

 


子どもダーリンシリーズがやっとここまで来ました。
いやはや、進みが遅くて申し訳ない。
今回は長官可哀相なことになってます。…本当はジャブラの方からも長官への距離が縮まってきてたんですがね。
でも認めたくないお年頃だんです、素直じゃないから。

 

カク「ありゃ…長官も可哀相にのぉ」(犬は鈍すぎじゃ)

カリファ「あら、私余計なこと言ったかしら?」(ごめんなさいね)

スパンダム「ふ、ふふふ…いーもん!そっちがその気ならいーもん!!」(涙目)

ジャブラ「ちょ、長官…」(焦)

ルッチ「なるほど、上げるだけ上げて落とすのはテクか、馬鹿犬」(しれっと)

ジャブラ「ち、違ェよ!!」(そんなんじゃねーよ!!)

3人「長官かーわーいーそーう」(ハモり)

ジャブラ「いつも散々イジメてる奴らがナニ言ってんだ!!」(机バンバン叩いて抗議)

 

スパンダム「俺だって!俺だって本気になるんだからなぁぁぁあっ!!」(バタバタ地団駄)

 

という訳で、次は何と白パンダが裏に進出します!(は?)
……多分。もしかしたら4じゃなくて5で裏逝きかもしれませんが。
つまり、この先の展開にちょっとアレなシーンが入るっつーことですよ、奥様。
本気になった長官、ナニするんでしょーねー、楽しみ♪