「長官っ!?何してるんですか…っ!」

衛兵の声が、後ろから響く。

何してるかって!?

んなもん、俺が一番知りたいってんだよ、ぶぁか!

 

 

 

悲しい。ただ、悲しい。

 

 

 

“もぅ……止めましょうや”

 

唐突に、ジャブラはそう言った。

いきなり何だってんだよ。

 

“俺ァ、御免だ”

 

御免って、そんなに俺といるのが嫌かっ!?

 

“子どもの気まぐれに付き合うのは、もう御免なんで”

 

子ども子どもって五月蝿ェってんだよ!

俺は本気だって何回言えば分かるんだ、この馬鹿犬。

初めて見た時から、ずっとずっと好きなんだ。本当に好きなんだ。

でも、俺は何年経ってもオマエにとっちゃガキでしかないんだな。

 

あんなに一緒にいて、まだ分からないなんて。

 

 

 

「くそっ!一体何だってんだよっっ」

 

苛々する。ただどうしようもなく、苛立ちが治まらない。

それなのに、鏡に映った自分の顔は、今にも泣き出しそうな顔。

いっそう惨めだと感じずにいられないような。

 

「くそっ!!」

 

ガシャァァァン!!

壁の鏡に思いっきり拳を突きたてた。

音を立てて、バリバリと崩れていく鏡の欠片。

皮の手袋をしているのに、自分の拳からはどくどくと血が流れる。

それは茶色の皮をどす黒く染めた。

それでも、何も感じない。

…全く痛みなど感じなかったのだ。

 

「………」

 

それでも衝動が抑えきれなくて、未だに残る破片をブーツで踏みつける。

バリバリ…ッ!!!

キラキラと輝く欠片は粉々に砕け散った。

 

 

 

 

 

「何事ですかっっ!!」

「長官!手から血がっ!」

「すぐに手当てを」

「医者を呼べ!ただちにだァァ!!!!」

 

物音のせいか、外からどやどやと衛兵たちが入って来る。

口々に自分の心配をしているようだが、その台詞すら頭には入ってこない。

 

されるがままに、その場から引き離されて、手にはぐるぐると包帯が巻かれる。

消毒など、自分が最も苦手としているはずなのに、全く痛みを感じなかった。

 

 

 

完全に、麻痺していたのだ。

 

 

 

悲しい。ただ、悲しい。

 

スパンダムは、ただそれしか感じてはいなかった。

 

 

 

完全に片付けられた、無人の執務室。

その場で静かに椅子にかけるスパンダム。

それは一緒。いつもと一緒。

 

ただ違うのは一つだけ。

静かに彼の頬を伝って落ちる水滴だけだった。

彼が思うのは、ただ一つ。

 

悲しい。ただ、悲しい。

 

To be continued

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さぁて、だんだん長官の心が黒くなって参りました。
と、いう訳で今回の長官はちょっと格好いいです。ええ。
いきなり佳境でもよかったんですが、とりあえずワンクッション。
どれだけ長官がショック受けたかを表現したくて、今回この4を作成しました。

 

カク・カリファ・ルッチ「最低」(ジト目)

ジャブラ「俺か!?俺のせいか!?」(こんなん知らんかった!)

カク「長官がまさかこんなにショック受けるとはの」(意外に繊細じゃ)

ジャブラ「あう゛〜」(だってよォ…)

カリファ「しかも、手ェ怪我しちゃったわね…」(可哀相に)

ジャブラ「うぐっ!」(い、痛いところを!)

ルッチ「十分に本気だろうに」(溜め息)

ジャブラ「ぐはァ!」(吐血)

3人「長官かーわーいーそーう」(ハモり)

 

くずのは「あ!でも次は十分ジャブラさん可哀相になりますよ」(長官豹変するから♪)

 

カリファ「ああ、例の裏逝き…」

カク「なるほど、そりゃ楽しみじゃの」

ルッチ「確かに」

3人「ファイト!」(爽やかに親指ブッ立て★)

ジャブラ「オマエらには人情ねェのかっっ」(滝涙で机叩いて意義あり!)