「どうしよぉぉぉ」

自分の部屋のベットで昏々と眠り続けるジャブラ。

普段なら嬉しいはずのシチュエーションも、今は全く逆で…。

スパンダムは一人、狼狽し続けた。

 

 

だって好きなんだ、どうしようもないくらいに。

 

 

そう、あの後。

一人、自分の本気を理解しないジャブラへの苛立ちを募らせたスパンダムはしばらく間を置いてジャブラを呼んだ。

とはいえ任務以外のことでは来ないだろう、ときちんと仕事を用意して。

そのとき、自分の手の怪我について気付いたジャブラ。

彼が自分のことを心配してくれたのは、分かりすぎるほどに分かっていたのだれど。

どういう経緯での怪我か、彼が知っているはずもないことも分かっていたのだけれど。

 

 

「ど…して……こ、んな…ぁっっ!!」

「オマエを滅茶苦茶にしてやりてェからに決まってんだろ」

 

 

…気がついたら、なし崩しでジャブラの身体を蹂躙していたのだった。

 

気がつけば、自分もジャブラも眠っていたようで。

目を覚ましたスパンダムの前には、手錠で両手を繋がれたジャブラの姿。

彼の下腹には布はなくて、辺りには明らかに……その、体液とかでべとべとで。

夢だと思いたくとも、頬を抓れば痛いし、何より自分の感覚としてリアルに残っていて。

慌ててジャブラの身体を綺麗にしてやり、部屋の片付けを終わらせた。

 

が、ジャブラが目を覚まさないのだ。

 

とりあえず、辺りに散った書類を集め、カリファに指示を出しておいたから、仕事に支障はないはずだろう。

だが、ジャブラは?と聞かれて狼狽した挙句…高熱で急に倒れたというのは明らかにバレていそうだ、とスパンダムは思った。

何せ、相手はカリファだ。(本当は長官の態度にも多いに問題があるのだけれど)

しかし、カリファは詮索することもなく、ジャブラの看病に戻っていただいていいですよ、と言ってくれた訳だし。

とりあえず、自分が執務室にいなくても…ここでジャブラを見ていても問題はない訳だ。

しかし、しかしである。

このまま目を覚まさないのも困るが、だからといって目を覚ましたら覚ましたで、どんな反応をしていいか分からない。

だって初めてなのだ、こんなことをしでかしたのは。

だって大好きなのだ、自分自身が制御できないぐらいに。

やさしくジャブラの髪を梳いて、その一房に口付ける。

そう、大好きなんだ。好きですきでたまらないのだ。

ここまで欲しいと思ったものはなかった。

だから、大切にしたかったのに。大事に大事にしたかったのに。

一体どこで歯車が合わなくなったのだろうか。

 

 

Σ!どうしよう、もしかしたら…もう二度と口きいてくれねェかもしんないっっ!!

 

考えれば考えるほど深みにはまって、部屋をぐるぐる回りまくった後、涙ぐんで頭を抱えた。

 

「アンタ……何してんで??」

「Σ!?」

 

一連の怪しい行動を見て、目を覚ましたジャブラは呆れたように声をかけた。

 

 

「ジャ…ジャブラ…」

「ア?…ァんだよ?」

「ご、ごめ…ん…俺、おれェェェ…っ!!」

 

ジャブラが目を覚ました嬉しさと、自分のしたことへの後悔とで、スパンダムの涙腺は盛大に緩んだ。

ジャブラに抱きついて、俯いたままぼたぼたと涙を零す。

とてもじゃないが、ジャブラと目を合わせることなんてできなかった。

 

「……説明して、くれねェんで?」

「………は、へ?」

「どうして……あんなことしたのか…」

「そ……れはっ!!」

好きだからだ。どうしようもなく。

だが、拒絶されるにきまっているはずのその単語を紡ぐことは難しい。

それでも、スパンダムは精一杯の神経を振り絞って、口を開く。

 

「………好きだからだよっ!悪かった、酷いことした。

でも、好きなんだ。どうしていいかわかんねェぐれェに大好きなんだよっっ!!」

 

一言。口にすれば、どんどんと言葉が勝手に出ていくようだ。

箍が外れたように叫ぶように言う彼の手は、変色するぐらいに握り締められていた。

「……好きだよぉぉ、ジャブラぁぁ」

「……こんな握り締めたら、また血ィ出るでしょうが」

「……え?」

怪我したほうの手を開くようにして持ち上げ、包帯の上から傷をぺろりと舐めるジャブラ。

その様子に、てっきり罵倒されるとばかり思っていたスパンダムは狼狽するばかりだ。

「…………嫌いになったんじゃ、ねェの?」

「……嫌いになってほしいんで?」

「いやいやいやいや、ヤダ、違う、困るっ……っ!?」

 

わたわたと慌てるスパンダムの唇に押し当てられた、やわらかいソレ。

それはどう考えても、キスの感触。

しかも、自分からしていないのだから、つまりジャブラの方からしてくれたということで…。

 

「ななななななな、何しちゃってんの!?オマエっっ!!」

「仕方ねェよな…」

「は?」

「あんなことされたのに…嫌いになるどころかアンタが好きだなんて、バカみてェだ」

「えェェェェェェ!?」

「……不服で?」

「いや、めっちゃ嬉しいけどもっっ!!怒って……ねェの?」

「………半分は、俺がアンタのこと子ども扱いしすぎたせいだし」

「でも、俺、あ、あんな……酷ェことっっ!!」

「謝ってくれただろ、あれでチャラにしましょうや」

「でででで、でもォォォォっ!!」

ダメだ、きりがない。こういうとこは全く子どもだ。

ジャブラは内心そう思いつつ、ぽんぽんと目の前の頭を撫でた。

 

 

「じゃ、もっかい“好き”っつって?」

「え?」

「それで全部、許せますよ、俺ァ」

「〜っ!」

「長官…」

 

 

 

「好きだよ、ずーっと昔から、会った時からお前が好きだっっ!」

「俺もアンタが好きですよ」

 

 

ジャブラは笑った。それが嬉しくて。

自分の、半ば身勝手だともいえる思いが通じたことが嬉しくて。

強く、強く。

ただこの幸せが消えないように、とジャブラの体を抱きしめた。

 

FIN

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よぉぉぉぉやく終わった、childishが!!

長かった。本当に長かったよ。しかも、終わりが微妙にシリアスタッチですみません。

 

スパンダム「ってワケで、ジャブラは俺んだかんなっっ!!」(胸張り!)

ジャブラ「別にそんな大声で宣言せんでもいいでしょうに…」(汗)

カク「しっかし、反則じゃろぉ…」(溜め息)

ルッチ「ほぼ泣き落としとはな…」(溜め息)

スパンダム「む〜っっ!!」←でも反論できない

カリファ「ま、長官がお子様なのは今に始まったことじゃないわよ」(溜め息)

スパンダム「そ、そんなことねェ…」

カリファ「セクハラです」(眼鏡、クイ!)

スパンダム「口答えしたからァ!?」(がぼーん!)

 

カク「しっかし一番の問題は年齢じゃろぉ」

ルッチ「ここではジャブラより2歳年下だったよな」

カリファ「年下ならお子様でもいいけどねぇ…」

 

3人「アンタ、ジャブラよりも4つも年上でしょう」(ばっさり切り捨て!)

※公式プロフィールにより、ジャブラ35歳、長官39歳の4歳差が判明。

 

スパンダム「うぐ…は…っ!」(ダメージ)

くずのは「うぉ…ぐふ…っ!」(ダメージ)

 

カリファ「ちょ、何でくーちゃんまでダメージ受けてるの!?」

くずのは「すんません、個人的には長官には年下でいてほしかった…」(滝涙)

カク「ま、長官があんなにお子様じゃ誤解もするじゃろ」

スパンダム「ちくしょー!!お子様お子様連呼すんじゃねぇよっっ!!」(ぷんすか)

ルッチ「じゃ、『ガキ』の方がいいんで?」(しれっと)

スパンダム「もっと嫌に決まってんだろっっ!!」(机だんだーん!)

カク「ま、ジャブラに呆れられなきゃいいがのぉ〜♪」←嬉しそう

スパンダム「っ!!!が、頑張るもんっっ!」(が、が、がぼーん!!)

カリファ「見物ね」

ルッチ「無理そうだがな」

 

 

ジャブラ「俺、別に今のままの長官、好きだぞ?」(ぽそ)

スパンダム「ジャブラァァァァっっ!!」(やっぱり大好きィィィ、と抱きつき)

 

3人「………ちっ」(舌打ち)

 

何はともあれ、この話の設定では長官が年下になっています。

まぁ、年齢についてはあまり触れていませんが…ちょくちょく長官が年下なのを気にしている描写があります。

その辺りは、パロディなのでお許し下さい。

 

このお子様ダーリンシリーズですが、かなり気に入っているのであとは外伝で増やすと思います。

余裕があれば、これは漫画化したいんですが…時間的に難しいなァ…(遠い目)