迷作童話劇場

 

@ 三匹のぶた

 

(この物語のイキモノは、人型に動物の尻尾がついてます。)

むかしむかし、あるところに三つ子のぶたが住んでいました。

三匹は仲はそこそこ。

しかし毎日の家事は三男のブルーノの仕事でした。

 

ぱたぱた…

今朝もブルーノは軽快なリズムで洗濯物を干していきます。

 

「フゥ…これで全部か」

 

満足げに青々とした空に広がる洗濯物を眺めるブルーノ。

とそこへ、森からお腹を空かせた狼がやったきました。

大変、このままだと食べられてしまいます!!

 

「ガルルルル…ガア!!」(ガブリ!)

「……鉄塊」

 

ガキン…ッ!

狼が丸太のように太い腕に齧りついた瞬間、それは鉄のように固くなりました。

 

「い゛て゛え゛ぇぇぇえっっ!」

 

狼は大きな歯を庇いながら、地面に転がり悶絶します。

 

「わ…悪い、大丈夫か?」

「うぅぅぅ…っ」

「おい…」

「うるさい!オマエなんで俺が平気なんだよ!」

「何でと言われても…」

「狼なんだぞ!オマエ食われるんだぞ!!」

「……無理だと思うが」

「何だと……っ!?」

 

きゅる゛るるるるるるる……!!!

狼が反論しようとした瞬間、凄い音が鳴りました。

 

「……急ブレーキか?」

「〜〜〜っ!」

「?」

「こんなところでブレーキが鳴るか!腹減ってんだよ!!悪いか!」

 

まぁ、なんとそれは狼のお腹の音でした。

無理もありません、もう一ヶ月以上も何も食べていないのですから。

 

「あぅ…腹減ったぁ…」

「………」

「うにゅ〜」

「………」

 

何だか見ていて可哀想になりました。

…朝食の材料はたくさん買ってあるので、3人分作るのも4人分作るのもそう変わりありません。

 

「………ウチ、来るか?」

「は?」

「飯食わせてやる」

「え……、でも俺…狼だぜ?」

「構わないぞ」

「けど…」

「来るのか、来ないのか?」

「う…………行く」

 

空腹に耐えられなかった狼は、気のいいブルーノの家に行くことに。

 

「オマエ、名前は?」

「ん?ジャブラ」

「そうか、俺はブルーノだ」

「へぇ……オマエ変わってんのな、ブルーノ」

「そうか?」

「普通、狼なんて家に入れねェよ」

「そうかもな」

 

朝食を作る間、ジャブラも皿並べを手伝います。

そんなことをしながら話をするなんて、狼には初めてのことでした。

ブルーノにとっても、上に兄達は手伝う習慣などないので初めてだったのですが。

こうして、ちゃくちゃくとご飯が完成していきます。

 

 

「………何だ、コレは」

「何だか可愛いのぉ…」

 

朝食ができあがり、キッチンへ兄達がやってきます。

彼らは口々にジャブラを見てコメントしました。

何せ尖った大きな耳に、体よりも大きなふさふさの尻尾を持つ生き物など、見たことがなかったのです。

 

「狼だ」

「ほう、コレが…」

「痛っ!耳引っ張るな!!」

「ふさふさじゃー♪」

「やめっ!尻尾触んなぁっっ!!」

「ルッチもカクもそのぐらいにしとけ」

 

長男のルッチも次男のカクもその愛らしさに興味深々。

しかしブルーノに窘められて、しぶしぶ二匹は椅子に座ります。

 

「驚かせたな」(なでなで)

「別に……」(パンをもすもす…っと)

「驚きすぎだ、バカヤロウ」(触りたい…)

「食べるとこも可愛いの〜」(もすもすって擬音語かの?)

 

そんなこんなで、楽しい朝食です。

ブルーノのご飯はとても美味しくて、ジャブラは幸せな気分になりました。

 

「で、コイツどうするんだ?」(ひょいっとジャブラの首掴み)

「ウチで飼うのかの?」(目がキラキラ)

「俺はペットじゃねぇ!!」(ジタバタ)

「こらこら…」(ルッチから救出)

「グルルルル…」(威嚇!)

「………」(誘ってんのか、バカヤロウ!)

「………」(可愛いすぎじゃ!)

 

威嚇する姿も、邪なおにいさんには逆効果。

さらにジャブラへと迫ります。

 

「………ドアドア」(溜め息)

「「あ゛っ!!」」(それ反則!!)

 

見かねたブルーノはドアを作ると、ジャブラを抱えて出て行きました。

 

「………悪いな、あんなやつらで」

「ブルーノが謝ることじゃないだ狼牙!」

「別にウチに住んでも構わんが、アレじゃぁな…」(いつか喰われる…)

「いや、そこまで世話になれねェよ」

「………スマンな」(あの愚兄どもがいなきゃな…)

「いいって、あ!飯ごちそうさん!美味かった!!」

 

狼はニカッと笑って森へと帰っていきました。

 

 

 

それから数日後。

空は生憎の空模様。

雨が屋根に打ち付けるように降ってきます。

「………」

「今日は酷いな」

「何でも、雷注意報じゃと」

「………」

 

激しい雨は初めてではありません。

でもブルーノには気がかりなことがありました。

 

「ちょっと出かける」

「おい、ブルーノ!」

「この雨の中、ドコいくんじゃ!!」

 

二本の傘とタオルを抱えて、ブルーノは森へと走ります。

 

 

「うぅぅぅぅぅ……寒い」

雷雨のせいで、狼は寒さに震えていました。

寝床の岩穴は雨で浸水、木の下にいるのですが、あまり雨を防いではくれません。

「……早く止まねェかな」

雨は嫌いでしたが、ジャブラは雨の後の虹が大好きでした。

 

「んんん?」

急に、自分の周りだけ雨が降らなくなりました。

「??」

「…見つけた」

「ブルーノ!」

そう、自分の上に傘をさしてくれたのです。

「どうしたんだ!?」

「いや、この雨だから心配でな」(タオルでふきふき)

「心配ねェって!ちょっと家が浸水したぐらいよぉっ!」(苦笑)

「浸水!?」(それ大事だろ!)

「どした?」(小首かしげ)

「………オマエ、ウチ来い」(溜め息)

「……ヤダ」

「何故だ?」

「………家狭くなるだろ」

「建て直しゃいい」

「………迷惑かかるぞ」

「構わん」(愚兄どもよりよほどいい)

「でも」

「いいから!!」

 

そのまま有無を言わさず、ブルーノは狼を抱えて家に向かいました。

 

 

「と、いうわけで家を建て直したいんだが」

「ま、いいだろう」(ソイツを置くためならな)

「全然OKじゃ」(一緒に暮らせるのは嬉しいの〜)

 

家族の満場一致で、建て直しも決まりました。

 

次の日、空は燦々と晴れ渡っています。

ジャブラの好きな虹がかかり、昨日の雨が嘘のよう。

 

「いくぞ、カク!」

「こっちはいつでも構わんよ」

 

トントントン……ッ!

ゴンゴンゴン……ッ!

ガンガンガン……ッ!

キュイィィン……ッ!

 

何と、兄達は船大工の経験がありました。

その勘を生かして、あっという間に立派なレンガのお家が出来上がります!

 

「す…凄ェ…」(尻尾ぱたぱた)

「あいつ等も少しは役に立つんだな…」(ボソっと小声)

 

そんなわけで、建て直しも完了して、新しい生活のスタートです。

 

 

 

 

「おい、ジャブラ!」

「ん?」

「悪いがルッチとカクを起こしてくれ」

「ん〜、分かった」

 

バタン…ッ!

「おいルッチ!朝だぞ、起きろ!!」

「うるさい、馬鹿犬」

「犬じゃねぇ!!とっとと起きろ!」

「もう少し艶めかしく起こしてほしいものだな」

「うぎゃぁぁぁ…っ!耳噛むな、変態!!」

 

バタン…ッ!

「おいカク!朝だぞ、起きろ!!」

「ん〜もうちょっとのー」(寝直し)

「コラ!起きろってば!!」

「ジャブラも一緒にどうじゃ♪」

「うぎゃぁぁぁ…っ!布団に引きこむな、バカ!!」

 

とまぁ、こんな感じでセクハラの耐えない毎日ではあるのですが。

でもジャブラは知っています、自分が本当に嫌なことはしないことを。

 

「はぁ、はぁ…っ」(肩で息)

「悪いな、毎朝」(苦笑

「いや、構わねぇ…」(でも肩で息)

「あ、出来たけど味見するか?」

「おう!!」(復ぁぁ活っっ!)

「美味いか?」(なでなで)

「むぐむぐ…美味い!!」(笑顔)

 

新しい日常は、前の一人ぼっちだった頃とは大違い。

仲良しのブルーノの横に当たり前のようにいられる生活…なんだか心がぽかぽかします。

ジャブラは、こういうのが幸せって言うのか?っと首をかしげました。

 

こうして、四匹はいつまでもいつまでも幸せに暮らしていましたとさ。

 

おしまい

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カク「ワシが三男やりたかったっ!」(ズルい!)

ルッチ「全くだ」(オマエだけいいとこ取りか?)

ブルーノ「そう言われても…」(後頭部かきかき)

二人「「ズルい!」」

ブルーノ「だって、お前ら料理下手だろ?」

二人「「う゛……っ!!」」(い…痛いところを!!)

ジャブラ「どした?」(ひょっこり現れ)

ブルーノ「おお、いいところに…新作食うか?」(パン差し出し)

ジャブラ「食う食う♪」(ふかふかパンをもすもす)

 

カク「料理…練習しようかの」(屈辱じゃ)

ルッチ「……同感」(敗北感たっぷり)

 

などと痛い連載作ってごめんなさい。

もう我慢できなかった!童話ネタってけっこうストックがあるのです!

っていうか、密かにプッシュなブルジャブ〜★

この二人はいつも可愛い感じになります。

 

表は「迷作童話」で裏は「オトナの童話」とか……どうだろう?(真顔)

一体アタクシは童話を何だと思っているんだろうか…(汗)