全く。

どーしてこんな雪が降ってるようなとこに、この馬鹿猫と来なきゃならねェんだろ。

はぁ、と小さくジャブラが溜め息を吐くと、それすらも煩わしいとばかりにルッチが睨みつけている。

 

あの長官、仕事できるくせにこういう気は回らねェんだよ、ホント。

 

 

作戦成功

 

 

さて、では一体何への配慮不足なのかというと、今回の任務の振り分けについてだ。

とはいえ、ジャブラにとっては任務は身体を動かしにいけるもので、嫌だと思う要素はない。

それでは何が問題かというと…この冬島の天候だった。

 

今回任務に来たのは、この雪が舞い散る冬島のとある国。

でもって、何でも早急に片付けたい任務らしく、ジャブラとルッチが派遣されたという訳。

まぁジャブラはイヌイヌの実の能力ゆえか、寒いのは別段何とも思わないのだが…。

寒いことを大問題とする男が一緒なのが問題だった。

猫はコタツで丸くなる、とはよく言ったもので、ネコネコの実のせいか、自身の体質なのか…。

とにかくルッチは寒いのが嫌いだった。

格好も、無駄にゴージャスでふさふさした防寒 ばっちりの毛皮のコート。

それでも寒いのか、ずっと不機嫌で、ジャブラが少しでも何かに反応すると、それにすら鋭い眼光を向けてくる。

 

ざくざくざく

雪道を歩いて、本日の宿へと向かう。

 

「あの……よ…ぉ…」

「………何だ」

「いや、そんな睨まれても困るだ狼牙」

「………睨んでねえよ」

「……そ、ぉか?」(滝汗)

「………自意識過剰だな」

「な…っ!?」

「………」(じろり)

「……はぁ」

「……溜め息を吐くな」

 

とまぁ、この調子。

…。………。……………。

いくら手っ取り早く片付けてェからって、これはねェだ狼牙ぁ…

ジャブラは正直泣きそうな気分だった。

 

確かに、ジャブラはルッチなんぞ大嫌いだ。

一緒に任務とか限りなく気は進まないし、むしろ一緒にいると自分が気を害することが多いので気分よくない。

しかし。しかし、だ。

だからって、ルッチと一緒で悪態をつくことはあっても、こんなに態度は悪くない。

 

いくらなんでも大人としてどうかと思うし、失礼なんじゃねェの?

 

…まぁ言ったら最後、どうせ言いくるめられて睨まれて終わりだから口にする気はないけれど。

 

 

 

 

さて。

ぱちぱちぱち…

暖炉の炎が小気味よく燃えて、暖かさを部屋中に。

 

「………」

 

ようやく本日の塒に着いたというのに、件の猫の機嫌は一向に上がらない。

暖炉の前で、憮然としながら無言を貫く。

 

ぉいぉい、これで明日の仕事大丈夫かァ?

 

まぁ任務といっても明日の夜に結構なんだし。

とある秘密裏で動く組織同士の取引の最中、中核にいる男数人を抗争に見せかけて殺すだけだし。

ルッチのことだからそつなくこなすんだろうけど。

それでもこの状態ってのは結構耐え難い。

ジャブラのような根が明るい話好きな人間なら尚更だ。

 

しゃァねェ…何とかすっか

 

ジャブラはもういちどこっそりと嘆息すると、ゆっくりルッチの傍に近づいた。

 

 

「……何だ?」

「別に、俺も寒ィから火にあたってるだけ」

「………」

「んだよ、文句あんのか」

「……別に」

 

そう言ったきり、また沈黙するルッチ。

本当に、寒いときのルッチは性質が悪すぎる。

…まぁ、ジャブラが色事に弱いと分かっているのに押せ押せで迫るルッチも十分性質が悪いのだが。

それでも、こんな胃にくるような性質の悪さではない。

と…。

 

「冷てェ!何だよ、こりゃ」

「別に、いつものことだ」

 

不意にルッチの指先に手が触れただけのこと。

そうして、その氷のような冷たさに驚きを隠せないジャブラ。

だがルッチは平然と普通だといい、なおかつジャブラの体温の方が異常だと言う。

なるほど、これでは寒いのが嫌いな訳だ。

 

「………これじゃ寒ィわな」

「…誰がそんなことを言った?」

「確かに寒いと言われた覚えもねェなァ、ぎゃはは」

 

図星でまた機嫌を輪つくするルッチを笑いながら、その手をぎゅっと握ってみる。

すると、驚いたように退こうとしたのだが、振り現れることはなかった。

 

「んじゃ、俺があったかくしてやろうか」

「ほぉ……どうするんだ?」

「こーすんだよ」

 

…ぱく。にゅる、ちゅくっ!

指先を咥えると、舌でにゅるりとくるむようにして暖める。

ちゅくり、と吸い上げると、ルッチは大仰に驚いていた。

 

「Σ…っ!?」

 

途端、いつもの自分を棚に上げて赤面するルッチ。

それが小気味いいのと、冷たい温度が気持ちいいのと、自分の体温が少しずつ移っていくのが面白くって。

そのまま咥えていると、不意に口から指が引き抜かれた。

 

「……一体どういう暖め方をしやがる、バカヤロウ」

「んでも、あったまっただ狼牙」

「………」

「心配すんな、両方平等にすっから」

 

そう言って笑うと、ジャブラは反対の手も同様に。

そうして、これで暖かいだろ?と訊いた瞬間、ジャブラはそのままラグに押し倒される。

 

「うぉ…っ!?」

「てめェ…散々煽って、覚悟はできてんだろうな」

「……んだよ、盛ってんのか?」

「盛らせたのはどっちだ、バカヤロウ」

「ぎゃはは、面白ェな、余裕ねェオマエ見んのは」

「………貴様」

「なぁ、さっきの………わざと煽ったっつったら、どーすんだ?」

「!」

 

ニヤリ、と笑ってジャブラが言うと、ルッチは一瞬驚いた顔をし、そのあと自分もニヤリと笑う。

 

「もちろん、責任をとってもらうさ」

「仕方ねェな……そんかし、明日はきりきり働けよ」

「あぁ、任せろ」

 

そう言って、ャブラの髪に口付けてくるので、珍しくジャブラの方から抱きついてやった。

どうせ任務は夜なのだから、少しぐらいは問題ない。

何より作戦は成功して、ルッチの機嫌も上向いたようだったので。

ジャブラは“責任”とやらをとってやるために、ルッチに自分から口付けを仕掛けた。

 

 

 

 

…明日の仕事は円滑に進みそうだ。

 

FIN

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くずのは「う゛ぇぇぇぇ………!!」(突然ですが、甘さが一定値を越えたので 〜以下略〜 )

 

これは、失礼。

ちょっと裏更新の元気は何ので表でちょっと甘イチャなルチジャブです。

リクの甘裏なルチジャブももうちょっとで完成ですので、もうちょっとお待ちを。

 

ジャブラ「って、オイ!」

くずのは「はい?」

ジャブラ「何で俺からこんな発情猫煽ってやんなきゃならねェんだよ!!」(机ばーん!)

ルッチ「というわりにはノリノリだったな」(目を瞑って回想中)

ジャブラ「思い出すな、馬鹿猫がァァァ…っ!!」(赤面で連打嵐脚!)

ルッチ「いやはや乱れようも凄かったな」(にやにや、連続剃!)

 

くずのは「しばしバトル中なのでしばらくお待ちくださいね」(にこり)

 

カリファ「待ったって終わらないわよ、あのバカップル」(優雅に紅茶呑みつつ)

カク「全くじゃ、よぉ飽きんもんじゃの〜」(生暖かい目)

 

そんな訳で(どんなよ?)寒いよるもお熱いトムジェリ…ではなくネコイヌでした。