確信犯とか、愉快犯とか。

そいつらはきっと、こんな気持ちなのかもしれない

 

 

喉の奥で低く笑う

 

 

「あ〜、暇だな、オイ」

スパンダムは執務室の豪奢な椅子の上で、一つ伸びをした。

「そう思うんなら机の上の書類、片付けたらいいんじゃねーの」

そんな彼を見咎めて、部下が声を掛ける

確かに、机の上には天高くという勢いで書類の山が築かれている

「るせぇなジャブラ……。とにかくコーヒー」

「はいはい…持ってきたぜ」

「って、オマエが持って来たのか!?」

「あぁ、別に構わねぇって、久々に愛しのギャシーとの逢瀬が出来たからようっ♪」

「………そりゃ……よかった」

その件については触れたくないとばかりに、スパンダムは一気にコーヒーを呷った

「って長官、その状態でコーヒー零……っ」

ガシャン!

「うおぁっちい!ちっくしょう、何だこんなコーヒー…っっ!」

「ちょい待ち、長官!」

いつものようにコーヒーを零し、いつものようにカップごと投げ捨てて被害を大きくする上司を、ジャブラはすんでのところで止めた。

「これ以上零されても…」

「うるせぇ!俺に指図するな!!」

(ダメだ、こりゃ・・・)

ジャブラは心の底からそう思った。

 

コンコン

「失礼します」

上品なノック音の後に、入ってきたのは長身の女性…

「書類の追加をお持ちしました」

「…カリファ、これ以上俺に仕事させる気か…」

げんなりと愚痴をいうスパンダム、しかし

「セクハラです」

「愚痴言ったからっ!?」

ばっさりと切り捨てて、見事なまでのシカトと決め込む。

「とにかく、全部片付けていただきますので」

そう言ってカリファは入って来た時と同じ優雅さで退出していった。

 

「うわっ、すげぇ量だな」

「こんなに終わる訳ねーだろー…」

「ま、ファイトだ長官」

「ジャブラまで俺を見捨てるのかっ!?」

「………俺にどーしろってんで?」

「独りじゃ寂しーじゃねぇかっ!!!」

言うに事欠いてそれかよ…とげんなりしつつ、ジャブラはしぶしぶソファへと座った。

 

なぁなぁとかこれどう思う?などといったスパンダムの構って攻撃を見事にかわしながら、

堆く積まれた書類の山が消えたのは夕刻になってからだった。

 

「やった、終わったぞ、ジャブラ♪♪」

「はいはい、よかったな長官」

「言葉に思いが篭ってないぞ、オマエ!」

「よく頑張ったって、ホントに」

「ホントにそう思ってんのかぁ?」

「思ってるっての」

「じゃ、ご褒美くれ!」

「………俺、今日一日長官に付き合わされたんだけど」

「それはそれ、これはこれだ!!」

んっとに、この我侭上司はもう

「何がお望みで?」

「え、ホントにいいのか?」

「良いも悪いもアンタが言い出したんでしょーが」

「んじゃ、明日は俺とデートしろ!」

「へいへい、デートね了解…………ってぇぇぇぇぇぇえぇえええええっっ!?」

「約束な!」

「長官、俺は男だぞ」

「知ってるぜ?」

「でもって、ギャシーを愛しちゃったりしてる訳で」

「でも付き合ってないんだろ?」

「〜〜っだけどよ、そんな俺なんか誘わなくても」

「何でだ??」

小首を傾げながら、心底不思議そうに問うスパンダム。

俺にとっちゃ、アンタの頭の中身の方がよっぽど不思議だっての!!

「カリファみたく美人もいるし、カクのほうが話題豊富だろうし…」

「だから?」

「んじゃ、ルッチみたく美形とか、ブルーノもいいやつだし…」

「で?」

「ならネロとかとのが面白いだろうし、クマドリやフクロウも長官慕ってるだろ…」

「俺はオマエじゃなきゃヤなの!!」

「何で!?」

意味わかんねぇ、何で俺なんだ??

すると、怒り出した長官が圧し掛かって、胸倉を掴まれた。

「オマエ、どこまで鈍いんだよ!好きだからに決まってんだろ!!!」

「好きって…誰が?」

「俺が」

「誰を」

「オマエをだよ!」

「ええぇえぇえぇぇぇえぇぇぇっっっっつ!?」

何かの間違いだ、絶対

 

「なぁ、長官」

「何だ?」

「カクにでも言われたのか?」

「?」

「俺をからかうようにって…」

「バカか、テメェ!!」

ゴン…ッ

スパンダムは思いっきりジャブラに頭突きをくらわせた。

「そんなに言うなら納得させてやる!」

というと、そのまま噛み付くように口付けた

「んーっんーんっんぅ…んむぅっっ!」

キスと呼ぶにはあまりに濃厚で…

スパンダムは巧みに舌を絡めてジャブラの口内を蹂躙した。

 

「んっはぁっはっ…〜〜っ何すんだよ!」

突然のことに、ジャブラは耳まで赤くなりながら抗議の声を上げた。

「だから本気だっつたじゃねぇか!」

「本気って…」

「伊達や酔狂で男にキスなんかするか」

「〜〜っんなこと言われてもよ…」

ジャブラは本当に困って、眉を寄せた

「その顔は反則だっての」

「あぁっ!?」

食ってかかるジャブラの耳元に唇を寄せると、低音で囁いた。

「そんなイイ顔されたら、この場で犯したくなるだろうが…」

「!!!!!!?っ」

その囁きに、飛び上がらんばかりに驚くジャブラ。

「とにかく、今どうこうしねぇから、明日は一日付き合えよ」

「何で俺が」

「いいのか、フクロウあたりに俺のキスでメロメロになってたオマエの話しても…」

「〜〜〜っ!」

「俺はこの島公認になれていいケドな」

「わぁった、明日一日空けりゃいいんだろ!」

「よし、約束な」

「ぜっっっったいにギャシーに余計なこと言うなよ!!」

その一言を言い捨てて、ジャブラは逃げるように部屋を後にした。

 

「ギャシーなぁ…」

口を開けばそれしか言わないジャブラに苦笑しつつ

「まぁいいさ、すぐに俺だけしか見えなくしてやるからさ」

そう言って、スパンダムは低く笑った。

 

恋愛なんて駆け引き次第

このゲームは負ける気がしないと

 

FIN

 

(この先はギャグタッチです。たぶん、上記の雰囲気ブチ壊してます♪)

くずのは「何か、長官が無駄に格好良いなぁ…」(遠い目)

スパンダム「俺様は本当は格好いいんだ!!」(だんだんと机を叩いて抗議)

ジャブラ「駄々っ子のくせに…」(はぁ…っと諦めのため息)

スパンダム「五月蝿い!!とにかく、デートったらデートすんだからな!!」(ビシっと人差し指突きつけ)

ジャブラ「へいへい」(わかりましたよ)

スパンダム「で、どこ行きたい?」(えへんと胸張り)

ジャブラ「…んなこと言われても」(滝汗ダラダラ)

スパンダム「あるだろ!俺と折角二人っきりで出かけるんだぞ!!」(だんだんと机叩き)

ジャブラ「………じゃ、某ねずみーランド」(無理だろ、ま、諦めてくれや)

スパンダム「よっしゃ、分かった!!」(そっか、意外に可愛いとこあるんだなvv

ジャブラ「ええええっっっ!!!?」(嘘だろ!?こっからどーやって行く気だ???)

スパンダム「そうと決まったら、海列車一台貸し切りにすんぞ!!」(直行便にしちゃえば平気)

くずのは「わーい、権力行使♪」(はい、どうぞっと電伝虫差し出し)

ジャブラ「え゛…っ明日って、誰か仕事なかったか??」(ええと…ええと…)

スパンダム「そんなん知らんわ!!」(長官は偉いんだい!!)

 

長官は一番偉いんです。

弱くったって偉いんです。

駄目っ子だけど偉いんです。

 

ジャブラ「もういいっ!たたみ掛けんな!!!」(だんっと片手で机叩き)