どうしてだ。どうやったらいいんだ。
自分からこんなに欲しいと思ったのも初めてなら、フラれたのも初めてだった。
ルッチは、苛立ちながら、目の前の書類に目を通していった。
パニック★ぱにっくA
意を決して言ったプロポーズを断られた。
それは、何もかもが自分の思い通りになっていたルッチには屈辱的なこと。
当然、その機嫌は急降下である。
その翌日、最低の気分でデスクワークに向かうルッチ。
ダンダンダンダンダンッ!!!!
この音だけ聞いたなら、工事でもしているのか?と疑問に思うところだ。
しかし、ここは司法の塔の中でも全員のデスクが揃った部屋。…そんなことがあるはずはない。
では、この音は何なのか?答えはシンプル。
…ルッチの指銃の音だった。
机の上に詰まれた書類を手に取りながら、空いた手で机に指銃を繰り返している。
おかげで、ルッチの机には銃口と同じ程度の穴が大量に出来ていた。…机の寿命もあと僅かといったところだろうか。
「おい…アレなんとかしてくれよォ…」(小声)
「何とかと言われましても…私も死にたくありませんし」(小声)
「じゃ、じゃぁ!ブルーノのエアドアで…っ」(小声)
「それ、後が怖いだろう…」(小声)
長官のデスクに集まりながら、この部屋にいる他の面子は小声でミニ会議を行う。
議題は「苛立つ肉食獣をどう宥めるか」である。
しかし。
小声でひそひそとされているのも苛立つもので、ましてや内容は筒抜け。
ルッチの苛立ちは最高潮に達した。
「貴様ら丸聞えだ、バカヤロウ!!!」
どん、とルッチが机を拳で叩いた瞬間、彼の机は音を立てて崩れた。
「「「………」」」
その勢いに、3人は無言になるしかない。
とにかく、ルッチの眼は本気そのもの。…下手をしたら殺されかねない。
「ま、まぁ落ち着いてルッチ…」
「そ、そォだぞ!落ち着けって!!」
「焦っても仕方ないだろう」
「焦るなだと!?この俺からプロポーズしてやったのに、断りやがったんだぞ、あの馬鹿犬がァっっ!!」(嵐脚!)
「あう〜壁も壊れたァ…」(経費で落ちるかァ、コレ…と滝涙)
「ま、まぁジャブラにも色々あるのよ…」(どうどう、と宥めつつ)
「この将来有望な俺に向かってだぞ!?」(信じられるか?とブルーノの胸倉掴み)
「しょ、将来とかそーゆー問題じゃないんだろ…」(とりあえずルッチの手ェ外して、と)
「くそっ!アレが女なら無理矢理孕ませて既成事実なんぞいくらでも作り放題だってのに」(頭抱えて天仰ぎモーション)
「………セクハラよ、ルッチ」(溜め息)
「止めとけ、カリファ」(カリファの肩、ぽんぽん)
「ルッチ……オマエそんな腹黒だったのかァ!?」(ガタブル)
「今更ですよ、長官」(眼鏡、クイ!)
「今更だな」(溜め息)
「大体、力ずく以外でどうやってモノにしろと!?」
「「「………」」」
大概ズレた男だと思っていたが、よもやこれ程だとは。
しかし、ここまで言い切る以上どうやら本気であることは確かなようだ。
とはいえ、同じ同僚が犯罪行為に走るというのは政府の機関としてよろしくない訳で。
「とりあえず、まずはデートからじゃないの?」
手近なところでカリファがそう進言してみた。
「ででで…でぇと!?」(赤面)
「いや、デートぐらい普通だぞ」(むしろオマエの思考がおかしい)
「し、しかしっ!そんなデートに誘うと言ってもっっ」(ど、どうやって!?)
「よぉっし、俺様が一肌脱いでやる!!」(ビシ!っと書類突き出し)
「………こ、これは!?」
「あら、これ次の任務じゃない」
「美食の街、プッチでの任務だな」
「ん〜本当はカクとジャブラに行かせる気だったけどよぉ…ルッチとジャブラで行って来いや!!」
「それとこれとどういう関係が…」
「鈍いわねェ…簡単な任務だから、さっさと済ませてジャブラとデートして来いって言ってんのよ、長官は」
「プッチなら……この辺りの店がオススメだ」(メモをかきかき)
「オ、オマエら…っっ!!」
「んじゃ、明日任地に出発だから、上手くやれよォォ!!」
かくして。ルッチの被害を減らすために、ジャブラを生贄にしよう企画は決行された。
おまけ
「長官…あの任務どのくらいかかるんですか?」
「ん〜普通で4日ぐれェかな」
「成程…ルッチなら2日程度か?」
「とりあえず、任命書に5日って書いといたけどよ」
「残った日数でデートしろってことか?」
「そうしたらしばらく被害ないだろ」
「…少なくとも3日は平和ってことね、この島」
「3日かァ…短ェな」(滝涙)
「ま、戻ってきたらまた対策を考えるさ…」(長官の肩、ぽんぽん)
ウキウキと部屋を出ていったルッチとは裏腹に。
残された面々は心配ごとが尽きない状態だったとか。
To
bo continued…
_
_ _ _ _ _ _ _
今回はジャブラさんの登場がありません。
その分、ルッチを思う存分ブッ壊しましたが。
今回は最も私の中でお約束な子どもおとなのルッチさんです。
お子様なパンダと違って大人だって自覚があるのがポイント。
でも自分の思い通りにならないものはないと思っているんですね、これが。
お次は二人のるんるんデートが書けたらいいなァ…(遠い眼)←絶対ないと思う。