さっと手を上げて、ギャルソンを呼ぶ仕草まで手馴れている。

「料理に合わせて、これを一本…」

成程、こういった仕草が、“クールで格好いい”と異性に称される所以か、とジャブラは溜め息を一つ吐いた。

 

 

パニック★ぱにっく4

 

 

連れて行かれたのは、随分と格式の高そうな店。

いや、ちょっと待て。これはちょっと…マズいんじゃぁないだろうか。

 

「………」

「どうした?」

「いや、俺やっぱパス」

「フランス料理は苦手か??」

「そういう問題じゃねぇよ…俺の格好じゃ入れないだ狼牙」

 

そう。前身黒づくめとはいえ、ルッチはちゃんとフォーマルな装いだ。

対する自分はといえば、とてもじゃないが、ラフを絵に描いた装いである。

流石に食事にいくとあって、いつものように上着を全開にしてはいないが、だからといって、フランス料理の店に、これだけ中華風の格好ではマズい。

 

「別に、個室にすれば問題ない」

 

自分の身なりから場違いだと申告するも、気にするなと手を引かれるジャブラ。

いつもならばここで一悶着ありそうなものだが、面食らったジャブラはされるがまま。

結局ルッチは慣れた様子でギャルソンに個室へと案内させた。

 

やはり、というべきか、自分の装いはかなり店に合っていない気がする。

豪奢な内装と給仕するギャルソン達の物腰に目を丸くしながら、渡されたメニューを見るのだが見慣れない横文字だらけで頭が沸騰しそうだった。

何が食べたいと言われても、最早胃に入るものなら何でもいい状態だ。

 

「いい、オマエに任す」

「そうか」

 

ちりん、と優雅にベルを鳴らすと、次々注文をしていくルッチ。

成程、こういうところを見習えば、俺もギャシーのハートをモノにできるのかもしれない。

料理に合わせて酒を選んでいるあたり、慣れてんだなぁと関心するばかりだった。

 

運ばれてきた料理は前菜から始まって魚料理と肉料理のコース。

それにシャブリとかいう白ワインが出てきた。

ルッチ曰く、フランス料理なのだから、フランス産のワインを選んだのだとか。

何でも、ブルゴーニュ?産のワインらしい。…俺には真似できそうもねェ。

…で、だ。

何つーか、これ旨い。辛口なのにフルーティーな味わいっつーか、呑みやすい。

しかも、魚にも肉にも合うのに驚いた。

何せ、ジャブラの知識の中では、肉料理は赤ワインぐらいしか分からないのだ。

…実は、それすらカリファの受け売りだったりするのだが。

とにかく、余りに呑みやすいので、かなりの量を飲んでいるようだった。

何せ、ルッチが多少なりとも格好よく見えるなんで、酔っているに違いない。

ナイフとフォークの扱い方や、口元に運んでいく様に、一瞬見惚れたなんて死んでも認められない。

しかも、どうした?と尋ねられるまで気に入らない馬鹿猫の顔を見ていたなんで寒気がする。

 

“…何でもねェよ”

 

よく分からない自分の行動を振り払うかのように、目の前のワインを飲むジャブラ。

料理もワインも最高なのだが、なにやら気持ちがもやもやする食事だと心底思った。

 

「さて、出るぞ」

「…おう」

「支払いを済ませてから行く…外にいろ」

「何言ってんだ?年下に飯奢らせるなんて真似させるかよ」

「……オマエ、ここで揉める気か?」

「う゛…」

「とにかく、どうしても嫌なら次回にでも奢ってくれればいいさ、センパイ」

 

暫し躊躇したジャブラにニヤリを笑い、ルッチはあっさりと支払いを済ませてしまう。

借りを作るのは御免だというジャブラの性格を考えれば、この作戦はかなり賢いといえる。

何せ、次回の約束を取り付けたようなものなのだ。

幸か不幸か、アルコールの入ったジャブラの頭ではそこまで深読みはできなかった。

 

 

こうして店を後にすると、夜風が心地良かった。

だが、何故か足元が覚束ない。

何だ、コレ??

 

「ジャブラ?」

 

ルッチの声が聞こえるのが分かるが、それが何を言っているのか判別できない。

 

「ジャブラ…ッ!!」

 

どうやら柄にもなく酔ったのか、ジャブラの脳裏は霞でぼやけて…。

もやもやした気持ちをふわふわした状態が混ざったまま、ジャブラの意識は白に飲み込まれた。

 

 

 

To be continued

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処は変わって、こちらはエニエス・ロビー

 

カク「で、無事デートできとるんかのぉ、あの二人」(粗茶ずずっと)

カリファ「まぁ、あの様子じゃいきなり食われたりしてないわよ…多分」(優雅に紅茶を一口)

スパンダム「カリファ…もうちょっとオブラートに…」(わたわた)

カリファ「セクハラです」(眼鏡クイッ!)

スパンダム「だから、どうして俺ばっかー」(うわーん、と滝涙)

ブルーノ「…あんまり長官を苛めてやるな、カリファ」(溜め息吐きつつ、長官の頭ぽんぽん)

カリファ「長官見てると苛々するのよ、ウザくて」(きっぱり)

カク「うわー言っちゃったのぉ」(滝汗)

スパンダム「うわぁぁぁぁぁんっ…!!」(さらにブルーノに泣きつき)

ブルーノ「……ほら、泣くな」(長官の頭なでなで)

カリファ「大体、貴方が甘やかすからこうなってるのよ」(ちろりと横目でブルーノ見つつ)

スパンダム「あ゛ま゛やがざれでん゛のはお゛ま゛えじゃねェかっ!!」(泣きじゃくって机ばんばーんっ!と意義ありモーション)

カリファ「…何ですって」(ごごご…と怒りのオーラ)

スパンダム「ヒィ…ッ!!」(恐怖で腰抜かした)

 

カク「絶対長官、口で身を滅ぼしておるのぉ…」(粗茶ずずっと)

ブルーノ「………コメントできんな」(溜め息一つ)