心の奥に燻る感情。
いつものポーカーフェイスで自分の意思を噛み殺すことなど容易いこと。
それなのに、どうしてだ?
この思いだけは、どう足掻いてもかき消すことが出来ない。
それはまるで食欲に似た、
どうしてコイツなのだろうか。
何度自問したか分からない。
いつでも無意味なほど明るくて陽気。
気付けば自分の目がそこに移っている。
でも時折、その笑みには蔭りが落ちる。
そうして真剣な眼差しを久々に見せたと思ったら…すぐに何かをごまかすように笑う。
どうして…そんな仕草にまで気付いてしまったのか。
正直、今まで綺麗だと思う女に出会ったことは少なくない。
何人と夜をともにしたかなど、それこそ覚えていられぬほど。
ふくよかな胸元や柔らかな肌に手を滑らせて猛りを沈める。
それは確かに快楽だった。
だが、これはその時など比にならぬほどの感情。
笑顔を見ると、どこかほっとするようで。
その声に名前を呼ばれるだけで、一喜一憂。
油断をしているとそのまま手をのばして抱きしめたくなる。
欲しい、欲しい、欲しい…。
こんな渇望は…初めてだった。
伝えてしまえば、楽なのかもしれない。
心で、言葉で、行動で。
だが問題はその後。
何度となく夢に見た。
思いを言葉にした後の、嫌悪にまみれたオマエの眼差し。
軽蔑しながら繰り返される、罵倒。
その瞬間、もう何もかもどうにでもよくなってしまって…これ以上なくお前を犯す。
深く、深く…何度も猛りを打ち込んで欲望を吐き出す。
そうして残ったのは、人形のようになったオマエだけ。
笑うことも喋ることもなく、虚ろな目には何を写さない、ただの抜け殻。
届かぬ、思い。
届けられぬ、思い。
できないのなら殺せばいい。
そうすれば、最期に見た自分しかその目には映らない。
そうすれば、コレは俺だけのものになる。
だが…
これでは駄目なのだ。
そんなもの、欲しいと望んではいない。
だから、逃げた。
出来る限り触れることなく、だが確実に自分の目の届く位置にオマエがいるように。
間違っても、この激情で壊してしまわないように。
距離を置けば、収まると思ったのだ。
なのに、収まるところか加速するばかり。
他の奴が触れるだけで、何かが爆発しそうだ。
こんなこと、今までに一度だってなかった。
そう…それはまるで食欲に似た、飢え。
飢えを凌ぐには…食い尽くしてしまうしかない。
…いつぞやの、夢のように。
「ばかばかしい」
こんなのはくだらない妄執だ。
頭を振って歩みを進める、向かった先は、広間だった。
偶然、本当に…偶然。
こんな偶然など、あってほしくはないのだが。
そこにいたのは件の人物。
すやすやと呑気に眠っている…ジャブラだけ。
いっそ、本当に食い殺してしまおうか。
ふとそんな思いが頭を過ぎる。
だが…
「バカ面だな…」
心底幸せそうに転寝を貪る顔を見ていると、そんな気も失せる。
それ以外に、この厄介な感情を消す手立ては一つ。
「貴様になら……殺されてみるのも悪くないな」
苦笑して、そっとその頬に触れる。
自分から…触れたのは初めてだった。
そのままそっと眠る奴の唇に口付ける。
それは気休めに過ぎなかったのだけれど。
ほんの少し、渇望が収まった気がした。
そんな自分に対して苦笑しながら、ルッチはそっと広間を後にした。
FIN
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ルッチさんの独白。やっぱりジャブラが好きで好きでたまらないみたいです(笑)
くずのは「しかし、寝てる相手にセクハラですか?」(流石〜♪)
カク「…いつもだったらそのまま押し倒しとるの」(ルッチらしくないじゃろ?)
ルッチ「……うるさい」(この頃はピュアだったんだ!)
くずのは「うわ…顔真っ赤」(放送できない顔してまっせ?)
カリファ「明日は嵐ね」(早くお洗濯しなくっちゃ)
ルッチ「ガルルルルル…」(獣化)
三人「逃―げろーっ!!」(笑顔ダッシュ!)
ルッチ「……ふん」(逃げ足の速い奴らだ)
しかし、シリアスが台無しですね(笑)
ルッチ兄さんの歪んだ愛情は報われるんでしょうか…ちょっと続きます。