触れられた頬はまだ温もりがあって…。

唇は燃えるように熱かった。

どうして……あんなことしたのだろうか。

 

 

従属

 

 

何度も自分を止めるのに必死だった。

だって、俺が好きなのはギャサリンちゃんで。

そんなギャサリンはあのバカが好きで。

世の中は上手くいかないと、そのくらいの気持ちしかなかった。

彼女がアイツに憧れるから、俺も次第とアイツを目で追うようになった。

…ただ、それだけ。

だが、見れば見るほど分かってしまうのだ。

あの男の凄さを。

 

惹かれていく自分が怖くて、何度もつっかかった。

自分など突き放してさらに高みまで行ってしまうように。

自分とは違いすぎるイキモノだったから、諦めることしか考えられなかった。

 

男にしては厭味なくらい整った顔。

ふわりと風になびく髪は、しょっちゅう視界に入ってきた。

細くてしなやかな指先は、殺し屋に似つかわしくないほど。

見る度に胸をキリキリと締め付けるものがある。

 

それでも…

この思いがどうにもならねェことぐらい知ってる。

だから、普通でいた。
いつもの俺らしく笑って、怒って…そんなことしかできなかった。

 

 

それなのに…どうしてあんな真似したのだろう。

どうして…今までの俺が必死で築いた作り物の俺を壊そうとするのだろう。

 

 

 

あの時、ただ長官を待っていた。

あまりに日差しが気持ちよくて、うとうととまどろんでいたのだ。

完全に寝ていたわけでは、ない。

 

そうして、近づいてほしくない気配が真横まで移動してきた。

 

寝たふりをした。

話かけられたところで、いつものように悪態をつくしかない。

なにより、上手く会話できる自信はなかった。

こんな始末に終えない感情に気付いてしまったのだから。

 

あのまま立ち去ってくれりゃよかったんだ。

そのまま出口に向かって…。

そうすりゃ、何事もなかったかのように明日も会うことができたのに。

 

 

ゆっくり、あのバカが動く気配がした。

唇に感じたのは他人の熱。

 

 

“貴様になら……殺されてみるのも悪くないな”

 

そんな台詞が耳に入ってきた。

 

何を思ってそんなことを言ったのか、分からない。

何を思って口付けなどしたのかも、分かるはずがない。

 

アイツの去った後…。

唇に触れれば、そこは熱を帯びたまま。

その後の長官との話は、頭になど入らなかった。

 

どうして、どうして、どうして。

 

そればかり頭を過ぎる。

 

期待いては…いけない。

こんなのは、ただの猫の気まぐれ。

だってそうじゃなきゃ、俺なんか目に入るはずがない。

 

あの男は、限りない高みにいるのだから。

 

 

 

俺が望むには……遠すぎる。

 

 

いっそこの思いを言葉にしてしまえばよかった。

そうして無残に突き放されれば…こんな馬鹿な期待など生まれはしなかった。

 

 

知らねェうちに…心はもう、従属してた。

……認めたくはなかったが。

どうしていいかわからないほどに、あの男しか、見えない。

ルッチしか…見えない。

 

 

「どうしろってんだよ…」

 

 

もう、どうしていいのか分からない。

 

頭ん中は、もうぐちゃぐちゃだった。

 

FIN

_ _ _ _ _ _ _ _

 

はい、ジャブラさん側からも独白〜。犬さんも結局猫さんが気になって仕方ないご様子(笑)

 

ジャブラ「べ、別に気になってなんかねえ!」(真っ赤)

カク「でもの〜、ルッチしか見えんのじゃろ?」(気になっておるじゃろ、コレは)

ジャブラ「そ、それは!あのバカが悪目立ちしてるだけでっっ!」(必死!)

カリファ「必死になって否定するとこ、怪しいわよ?」(ふふ、分かりやすいわね)

ジャブラ「だから、それは違…っっ」(違うんだっての!)

 

カク&カリファ「ルッチ〜、ジャブラが“ルッチが好き★”だって〜」(にこやか笑顔)

 

ルッチ「…さっさと言え、バカヤロウ!」(ちっ悩んだだけ無駄だったな)

ジャブラ「抱きつくな、バカ猫」(離れろ、変態!)

ルッチ「いっそ、この場で喰……」(構わんだろう?)

カク「はい、ストップじゃ」(落ち着かんかい)

ルッチ「?」(両思いならいいだろうに…)

カリファ「ここでおいしく頂かれては困るのよ」(抱きつくとこまでで我慢なさい)

ルッチ「…これはまだ続くのか?」(期待に満ちた目)

 

つ、続きます。……表で続ける予定ですが(苦笑)

 

ルッチ「…次こそきちんとモノにしたい」(ジャブラをぎゅうっと)

ジャブラ「うるさい!!俺はオマエなんか好きじゃねェっっ!」(真っ赤)

 

カリファ「本当に素直じゃないのね…」(さっさとくっつけばいいのに)

カク「まぁまぁ、こういうのも楽しいじゃろ」(…見ている分には、の)

カリファ「……まぁね」(他に娯楽ないし)

 

 

スパンダム「仕事してくれよぉ…」(滝涙)